2008年5月10日(土)「しんぶん赤旗」

宇宙開発は平和限定に

吉井議員 基本法案を批判

自公民賛成衆院委可決


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(写真)質問する吉井英勝議=9日、衆院内閣委

 自民、公明、民主の三党は、宇宙の軍事利用を推進する宇宙基本法案を九日の衆院内閣委員会に共同で提出し、提案理由の説明後、わずか二時間の質疑だけで可決しました。日本共産党は反対しました。

 質疑で日本共産党の吉井英勝議員は「(同法案の)問題は軍事に道を開くことにある」と述べ、宇宙開発は平和目的に限るとした一九六九年の国会決議を百八十度転換するものだと批判。平和目的に限るなどの修正や情報公開を強く求めました。

 自民党国防族、防衛省幹部、軍事企業でつくる「日本の安全保障に関する宇宙利用を考える会」は、報告書で、日米共同の「ミサイル防衛」システムにおける宇宙利用の必要性や、自衛隊が海外で活動するための「防衛専用通信衛星の保有が不可欠」としています。吉井氏は報告書の内容を指摘し、同法案がこうしたことを可能にするのかとただしました。

 提案者の自民党・河村建夫議員は「防衛専用通信衛星」について、「国際平和協力(海外派兵)で(利用するために)可能になると考えている」と述べ、保有は可能との見解を明らかにしました。河村氏は「(「ミサイル防衛」のための)早期警戒衛星についても、別途考えるべき課題だ」と保有を否定しませんでした。

 他国の軍事衛星を宇宙空間で破壊する「キラー衛星」について町村信孝官房長官は「特定の政策についてお答えできる段階ではない」と述べ、明確には否定しませんでした。


宇宙開発の国会決議

 一九六九年の宇宙開発事業団の設置に伴い、同年五月、衆議院本会議は「我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」を全会一致で行いました。決議は、「宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り」と規定しています。同年六月に成立した宇宙開発事業団法の活動は「平和の目的に限り」行うこととされ、これは、現在の「独立行政法人宇宙航空研究開発機構法」にも引き継がれています。


自公民の“宇宙軍拡宣言”

解説

自民・公明・民主の三党が、九日の衆院内閣委員会で採決を強行した宇宙基本法案は、日本の宇宙開発・利用に重大な方向転換を迫る“宇宙軍拡宣言”です。

 これまで日本の宇宙開発は「非軍事」に限定されてきました。そのなかで、小惑星探査機「はやぶさ」や月探査機「かぐや」など、世界に誇る成果をあげています。非軍事の宇宙開発は、日本の科学者・技術者たちの誇りです。

 この平和主義を担保しているのが、一九六九年に衆院本会議で全会一致で採択された決議で、宇宙開発のあり方を「平和の目的に限り」と明記していることです。

 今回の法案は、宇宙開発利用の目的に「安全保障」を入れることによって、おおっぴらに軍事利用できるようにすることが狙いです。

 自民党が二〇〇六年にまとめた宇宙政策の報告書では、防衛分野を「宇宙技術の最適利用分野」と位置づけ、宇宙平和利用決議が制約となって「自衛隊の海外派遣に必要なインフラが整わない」と記述。決議を死文化する手段として、議員立法による宇宙基本法で「安全保障」の目的をかかげる必要性をあげていました。

 自民党防衛族、軍需企業幹部、防衛省幹部が一体となって、ミサイル防衛のための監視衛星、海外派兵のさいの「防衛専用通信衛星」、さらには「宇宙レーザー衛星」などの攻撃衛星も視野に入れた検討も進めてきました。

 この背景には、国費による衛星やロケットの受注を増やしたい宇宙・軍需産業が「宇宙の産業化」「安全保障の活用」を露骨に要求してきたことがあります。今回の法案には、研究成果の企業化、財政・税制・金融上の優遇策が明記されました。

 法案には「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ…」という文言を入れています。しかし憲法の平和主義の理念は、自公民の意図する「安全保障」を口実とする軍事利用とは本来、相いれないものです。憲法の理念のもとに行われた「平和利用原則」の国会決議を厳守することこそ求められています。(中村秀生)

宇宙基本法案骨子

 ▽国際社会の平和と安全の確保と我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進する▽宇宙産業の技術力と国際競争力強化のために税制・金融上の措置を行う▽「宇宙開発戦略本部」(本部長・首相)を内閣に設置し宇宙政策を推進する▽情報の適切な管理▽地方公共団体による自主的な施策実施の努力義務▽内閣府の役割についての法整備、宇宙航空研究開発機構の業務の範囲や所管する行政機関の見直しなどについて、一年後をめどに進める。


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