2008年5月10日(土)「しんぶん赤旗」
主張
特定財源法案否決
再議決は首相の約束に反する
参院の財政金融委員会が、ガソリン税などを道路特定財源にする特例法改定案を否決しました。
道路財源の税金のうち、根拠法で特定財源と定めているのは地方道路税と自動車取得税、軽油引取税だけです。暫定税率を含むガソリン税や石油ガス税は本来、一般財源であるにもかかわらず、特例法によって道路特定財源にしてきました。
特例法改定案はガソリン税などを十年間にわたり「道路特定財源化」するとともに、十年間の道路事業量を決めると定めています。際限なく高速道路を造り続ける道路中期計画に根拠を与え、巨額の税金を浪費する改定案を否決するのは当然です。
閣議決定は保証にならぬ
自民党と公明党は、数の力を行使して十三日にも衆院で特例法改定案を「再議決」し、強引に成立させる方針を明らかにしています。
福田康夫首相は来年度から道路特定財源を廃止して一般財源にすると約束しています。この首相の約束と十年間にわたって道路特定財源を維持する特例法改定案が真っ向から矛盾していることは明らかです。
政府・与党は「再議決」の前に「一般財源化」の方針を閣議で決定するから、首相の約束は守られると主張しています。
しかし、すでに政府・与党は三年前、「一般財源化を図ることを前提とし、…具体案を得る」という「基本方針」を決めています。この方針を政府は、閣議決定である「骨太方針二〇〇六」に盛り込み、「行革推進法」にも明記しました。「一般財源化」は、とっくに閣議で決定され、法律にまで書き込まれています。
この国民への重ねての約束を踏みにじって、政府・与党が道路特定財源を十年間維持する法案を提出したことに国民の怒りが爆発したのです。いまさら「閣議決定」しても、何の保証にもなりません。
何より政府・与党が固執している五十九兆円の道路中期計画は、バブル期の高速道路計画を復活させ、果てしなく大型道路を造り続ける浪費計画です。福田首相は十年の計画期間を五年にするとしていますが、まず事業の「総額」を決めて予算の枠を確保するやり方を続ける以上、浪費はとまりません。
四月の政府・与党合意は「必要と判断される道路は着実に整備する」とのべ、首相は「必要と判断される道路」とは中期計画に盛り込まれた道路であることを明らかにしています。
「中期計画」は、拠点空港・港湾から高速道路までの所要時間を数分短縮する事業に、年間六百三十億円も投じる計画を掲げています。他方で、いま全国の障害者を苦しめている障害者自立支援法の一割負担の中止は、五百十億円の手当てで実行することができます。九日の参院審議で、「どちらに緊急性があると思うか」と質問した日本共産党の大門実紀史議員に、福田首相は平然と「どっちも大事」と答えました。
一般財源化の試金石
政治的立場に違いがあっても、心ある政治家なら「障害者の支援こそ緊急だ」とはっきり言うでしょう。それすら首相が明言できないのは、公明党の冬柴鉄三前幹事長と北側一雄幹事長の二代の現・前国土交通大臣がつくった道路中期計画に、がんじがらめになっているからです。
閣議決定は、大切な税金を湯水のように高速道路につぎ込むのをやめ、切実な福祉と暮らしに充てる保証にはなりません。一般財源化の最大の試金石は、「再議決」そのものをやめるかどうかです。
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