2008年5月14日(水)「しんぶん赤旗」

電子投票法案 どう考える?


 〈問い〉 日本共産党は電子投票法案に反対したとニュースで知りましたが、その理由は何ですか?(静岡・一読者)

 〈答え〉 国政選挙にも電子投票を導入しようとする公職選挙法特例改正案は、いま参議院で審議中です。昨年末の臨時国会では、衆議院での採決のとき、日本共産党だけが「時期尚早」の理由で反対の立場をとりました。

 電子投票制度は、条例を定めた地方自治体の議会議員と首長の選挙においてのみ、2002年に特例として導入されました(現在、条例制定自治体は、実質7市町村)。トラブルが多発したため、導入は広がっておらず、首長選挙に限定したり、条例を廃止したりする市町村もでてきています。

 国政選挙の場合、仮に、導入した市町村でトラブルが発生すれば、全国的規模で選挙そのものの有効性が問われます。候補者数が多い参院比例選挙の場合、電子投票機にどのように表示するかは、選挙の公平・公正にかかわる大問題ですが、その方法は、「政令」に委ねられており、問題は何ら解消されていません。また、全国選挙でありながら、自治体によって投票方法が異なるため、これで同一選挙といえるのか、という疑問も残ります。

 また、現状では、制度の前提となる電子投票機の信頼性が確保されておらず、電子投票機の設計・製造・保管・使用の各段階で検査が行われなければ、不安がつきまといます。しかし、すべてのチェックが不可能であることを総務省も認めています。

 電子投票は、ひとつの自治体で何千万円も余分に費用がかかるなど導入コストが多額で、自書式投票よりコスト高です。また、特殊な機器を使うため、研究開発可能な一部のメーカーに限られてしまいます。多数の電子投票機が一斉に必要となる国政選挙に導入すれば、巨額の費用がかかることになり、メーカーの新たな利権になるのではないかという問題も指摘されています。

 電子機器の技術進歩は急速であり、いまの段階で不十分な制度を拙速に成立させる必要はありません。選挙は、「秘密投票主義」「一人一票主義」などの基本原則は決して揺らぐことがあってはなりません。民主主義の根幹である選挙の公正・公平が確実に確保されていなければ、その正当性が失われることになります。

 電子投票制度には、「開票の迅速化」「疑問票の解消」「自書が困難な有権者の投票が容易になる」などのメリットがあることも事実です。しかし、現時点では先に指摘したデメリットの方が大きいと言わざるをえません。

 これらのことから、国政選挙への電子投票の拙速な導入に反対の立場をとりました。(陽)

 〔2008・5・14(水)〕


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