2008年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
主張
GDP
暗雲のたなびきが見える
内閣府が発表した一―三月期のGDP(国内総生産)は、物価変動を差し引いた実質で三期連続のプラスとなりました。
一見すると順調なようですが、統計数字の背後を見ると暗雲のたなびきが見えています。貧困を広げて国内消費を冷やす一方、大企業の輸出と設備投資に依存した「構造改革」路線の限界が鮮明に表れています。
輸出頼みが限界に
実質GDPの伸び率は0・8%、その大半の0・5%を外需(貿易黒字)が占めています。家計消費など国内需要は0・3%を占めるにすぎません。しかも、家計消費の伸び率は、二月が一日多い「うるう年」の効果で相当かさ上げされています。設備投資はマイナスに落ち込んでおり、国内需要の弱さは明確です。
外需はサブプライムローンの破たんをきっかけにしたアメリカ経済の混乱とドル安や、原油高騰の影響を強く受けています。ドル安・円高で輸出品のドル建て価格が上がって輸出条件が悪化するとともに、円高による輸入価格の低下をはるかに超える原油や穀物の高騰で輸入条件も大幅に悪化しました。
輸出と輸入の両面で交易条件が悪化しているために日本の所得が大きく目減りしています。その目減りの規模が急膨張して一年前の一・六倍の二十六兆円に膨らみ、外需の三十二兆円に迫っています。前期比の伸びを見ると、外需が二・九兆円増えたのに、交易条件の悪化による目減りが三・四兆円も拡大し、帳消しにしてしまいました。貿易黒字が日本経済に波及するどころか、貿易が国内の所得を侵食する構造になりつつあります。
さらに、アメリカ経済の混乱と世界経済への連動で外需そのものが不安定になっています。設備投資はもともと輸出上位の大企業に偏っていましたが、外需の見通しが立たないためにマイナスに転じました。輸出頼みの経済成長が完全にゆきづまっていることは明らかです。
それでは内需でカバーを、と言えないところに日本経済の大きな弱点があります。今週初めに内閣府が発表した「景気ウォッチャー調査」によると、景気の実感は底ばいを続けています。家計は先行きも悪化するという判断です。その判断理由を見ると、食料品値上げに加えて、「暫定税率の復活」や「高齢者医療費の負担増」をあげている人が圧倒的です。
福田内閣と自民党、公明党が世論を無視してガソリン税の暫定税率を復活し、「後期高齢者医療制度」の実施を強行したことが、国民生活に深刻な打撃を与えています。
軸足を国民生活に
「構造改革」は法人税や配当課税の減税などで大企業と高額所得層の税負担を減らしてきました。他方で、定率減税の廃止や後期高齢者医療制度など社会保障の改悪で、若者からお年よりまで庶民の暮らしを痛めつけてきました。
貧困と格差を拡大する政治を改めない限り、内需の大半を占める家計消費は復活せず、日本経済の安定的な発展もありません。政府・自民党が増税を狙う消費税は低所得層ほど重い負担を強いる貧困拡大税です。絶対に認めるわけにはいきません。
自民党がアメリカや財界いいなりで進めてきた食料の海外依存のツケが、輸入食料品の高騰となって家計を直撃しています。内需振興の面からも自民党農政の転換が急務です。
軸足を国民の暮らしに置いた経済政策に切り替えることが重要な課題として浮かび上がっています。