2008年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
マルクスがいった恐慌10年周期説とは?
〈問い〉 資本主義につきものの恐慌は10年ごとに起きるとマルクスは言ったと思いますが、その根拠は? また、現在は、その間隔は短くなっている感じですが、現在は、恐慌10年周期説をどう考えるべきなのでしょうか?(長野・一読者)
〈答え〉 マルクスは、恐慌が10年ないしは11年ごとに起きる「物質的な基礎」として、機械や工場など固定資本の平均寿命(再生産期間)が約10年であることをあげました。そのことは、『資本論』第2部の第9章「前貸資本の総回転。回転循環」にでてきます。
固定資本と流動資本で、資本の寿命も回転の仕方も違うことを明らかにしたマルクスは、まず、固定資本の寿命が、物理的な摩滅と社会基準上の摩滅とを総合して、「こんにちでは平均して10年」と見られると述べています。そして、これが恐慌の周期とほぼ一致することから、「資本は、その固定的構成部分〔固定資本のこと〕によって、連結した諸回転からなり多年にわたる循環に縛りつけられている」、「このような循環によって、周期的恐慌の一つの物質的基礎が生じる」と指摘しました。
しかしそこでは、固定資本の平均寿命が10年であることが、どうして恐慌の周期の基礎になるのかまでは解明されていません。
またマルクスは、この10年という周期を固定的なものとも考えませんでした。1875年に『資本論』第1部のフランス語版を出版したさいには、「この数字は不変なものとみなすべき理由は何もない」「循環の周期はしだいに短縮されるであろう」と述べました。
ただ、そうなると、恐慌の周期を固定資本の平均寿命と結びつけるという考え方そのものも違ってくるはずですが、マルクスは、そこまでは述べていません。しかし、「物質的基礎」についての指摘についても、マルクス自身がより柔軟に発展、変更させたことは事実で、『資本論』での解明もそれをふまえて読まれるべきでしょう。
なお、恐慌の周期は、マルクスが「短縮されるであろう」と書いたあと、ふたたびほぼ10年にもどっています。第2次世界大戦後も、1957年、67年、74年、80年、91年、2000年と、ほぼ10年の周期で起きています。(学)
〔2008・5・17(土)〕