2008年5月21日(水)「しんぶん赤旗」
自民がNHK番組攻撃
山下議員 “政治介入”と批判
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二十日の参院総務委員会で、日本共産党の山下芳生議員は、自民党の礒崎陽輔議員が午前中の質問でNHK番組を攻撃した問題について取り上げました。
礒崎議員がやり玉に挙げたのは、NHKスペシャル「セーフティネット・クライシス 日本の社会保障が危ない」(五月十一日放送)。仕事を失い、国民健康保険料が払えず保険証を取り上げられた結果、医療が受けられずに亡くなった男性や、介護保険制度の改悪で必要な介護が受けられなくなった七十代の女性の姿を映し出し、今の社会保障制度について迫った番組です。
礒崎議員は「保険料の減免制度もあれば、医療扶助もある。制度上では医療をうけられないことはない。保険証の取り上げと死亡の因果関係を検証したのか。きわめていいかげん」と述べました。
さらに「政治的公平の観点から問題がある」とし、番組冒頭に出てきた二つの病院が「民医連に加盟し、日本共産党と深い関係にある。偏った取材である」と決めつけました。
これらに対して、山下議員は「こうした番組から、政治の責任と役割を重くうけとめるならともかく、あたかも取材先に問題があるかのような発言で、番組制作を委縮させるような行いこそ、公正性を欠き、政治介入になる」と厳しく批判しました。
福地茂雄NHK会長は、礒崎議員の発言に対しては反論せず、「(会長の)指示していることが現場にどれだけ伝わっているか」として、Nスペや企画部門、映像編集などの現場へ会長自身が出向きチェックしていることを明らかにしました。
解説
番組、社会保障を検証
「偏向」攻撃 自民の常とう手段
自民党の礒崎陽輔参院議員が、名指しで批判したのは、機能不全に陥った日本の社会保障制度のほころびを、健康保険、年金、介護保険、生活保護の四つの角度から検証した番組でした。
実態を取材したVTRと共に、スタジオでは政府の社会保障国民会議座長・吉川洋東大教授と経済同友会の社会保障改革委員長・門脇英晴氏、金子勝慶応大学教授が討論しました。番組の特徴は政府や財界代表ですら、番組が示した圧倒的事実を前に、社会保障制度が危機にひんしていることを認め、拡充の必要性を口にしたことでした。
礒崎議員が攻撃した病院は、無保険で担ぎ込まれた患者の相談に乗っている現場です。番組が、取材の過程で国のセーフティーネットからこぼれおちた人々に手をさしのべている現場を取り上げるのは当然のことで、そこに批判の矛先を向けることは本末転倒です。
自民党は三月の総務委員会でも世耕弘成参院議員が、「NHKスペシャル」をやり玉にあげ、「ワーキングプアの問題とか貧困の問題に偏り過ぎている」と非難しました。「反日的」と攻撃された映画「靖国」への干渉を思い出すまでもなく、「偏向」という言葉は自民党が番組に圧力をかける際の常とう手段であり、国会の場を借りた「放送の自由」への介入です。NHKは、き然として「自主自律」を貫くべきでしょう。(板倉三枝)