2008年5月26日(月)「しんぶん赤旗」
主張
介護保険改悪
“保険あって介護なし”許せぬ
高い保険料・利用料、そのうえ必要な介護・福祉サービスが受けられない―。介護が必要な人を社会全体で支えるという介護保険制度の当初の宣伝に逆行する実態に利用者から悲鳴が上がっています。
財務省は今月十三日、介護保険の給付費(費用)をさらに抑制する方針を提示しました。
これでは保険料を払っても介護保険が利用できないという「保険あって介護なし」の事態がいっそう激化し、高齢者介護が根底から破壊されかねません。
利用者も支える人も
財務省が財政制度等審議会に示した抑制案は、「要支援1―2、要介護1―5」の七段階に認定された対象者のうち、「要介護2」以下の人を給付から外すなどすれば二兆九百億円削減できるというものです。
介護保険制度は二〇〇〇年四月に施行以後、利用制限と利用料の負担が増え、利用者や家族、介護の現場からも批判の声があがっています。自民、公明、民主の各党の賛成で〇五年に改悪(〇六年四月実施)された介護保険法では、「軽度」の人を中心に介護ベッドや車いすの「貸しはがし」や、訪問介護の時間が減らされるなどの「介護の取り上げ」が全国に広がり、厳しい批判が巻き起こりました。
制度の改悪後、給付費は政府の当初予算見込みすら下回ることが繰り返されています。給付費の伸び(実績)は〇六年度を境に急に鈍化し、横ばいになっています。〇六年度は当初予算六兆五千億円に対して実績が五兆九千億円で、六千億円も抑制されています。高齢者人口が増加するなかでの減少は異常です。
厚労省が給付費の削減を「給付適正化」の名で旗振りするなかで、法令に照らしてもゆきすぎた利用制限をする自治体が増えており、大きな問題になっています。大阪府が昨年八月に配布したマニュアルでは、不適切な例として▽病院の帰り道にある店での買い物▽生活費を出金するための金融機関の中での介護▽冠婚葬祭、墓参りのための外出▽認知症の人の気分転換の散歩―などをあげています。介護報酬の返還命令もおこなっているといいます。
日本共産党の小池晃参院議員は、二十日の厚労委でこの問題を取り上げ、政府に調査と改善を求めました。舛添要一厚労相は全国調査を約束したうえで、「介護保険の目的は、介護される人や家族が快適な状況になること。柔軟な発想が必要だ」「何でもかんでもお金の計算だけでやるのはどうか」と答弁しています。
必要な介護が受けられなかったり、介護従事者の劣悪な労働条件が放置され、必要な人材確保もままならないというのでは、公的介護制度とはいえません。介護を受ける人の生活と権利を守るとともに、支える人も安心できる制度に改めることこそ、いま政府がやるべきことです。
国庫負担の引き上げを
日本共産党は、介護保険制度のさらなる改悪にきっぱり反対します。
保険料や利用料が高い要因は、介護への国庫負担を50%から25%に引き下げたことにあり、国の責任は重大です。国庫負担を計画的に50%に引き上げることを目標に、直ちに30%にし、国の責任と自治体の努力とを合わせた実効ある減免制度、介護・福祉労働者の労働条件の改善、必要なサービスが受けられるようにすることなどを実現すべきです。
誰もが人間らしく安心して暮らせるよう、よりよい介護制度の実現へ力をつくします。
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