2008年5月31日(土)「しんぶん赤旗」

主張

差別医療制度

「大事にする」なら廃止せよ


 「自民党はおじいちゃん、おばあちゃんを大事にする政党なんだろ。だから制度をつくったんだろ。困ったことは直せばいい」。県議選に合わせて沖縄で始まった自民党の後期高齢者医療制度のテレビCMです。

 怒っているのか、言い訳しているのか理解しがたいCMです。後期高齢者医療制度が高齢者を「大事にする」制度だと開き直り、政府・与党による「見直し」をアピールしていることは分かります。

 七十五歳という年齢でお年寄りを差別する後期高齢者医療制度は考え方の根本が間違っています。保険料の一部引き下げなど、小手先の「見直し」ではどうにもなりません。

制度の根幹に原因

 舛添要一厚労相らは、「高齢者の負担を抑えるために保険料負担を一割に抑えた」と強調しています。しかし、「一割」は最初だけで、保険料は二年ごとに改定し、七十五歳以上の人口や医療費が増えるに従って自動的に引き上げる仕組みです。

 高齢者人口の増加の影響だけで、団塊の世代が制度に入る二〇二五年度に保険料は三割増、現在二十代後半の人が制度に入る五五年度には二倍近くに跳ね上がります。医療費増加の影響を含めると保険料は二五年度には現在の倍以上に膨らみます。

 これほど過酷な負担増になる原因は、制度の成り立ちそのものにあります。厚労省の担当者は、「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」とあからさまに説明しています。

 後期高齢者医療制度の狙いは、七十五歳以上のお年寄りを別枠に囲い込んで肩身の狭い思いを味わわせ、負担増と差別医療を強いて医療費を抑制することにあります。

 社会保険は、自己責任や助け合いではカバーしきれない個人のリスクに備えて、政府も企業も費用を負担し、個人を社会的に支えていく制度として発展してきました。後期高齢者医療制度は、この発展の流れに完全に逆行する時代錯誤の制度です。

 舛添要一厚労相は「この国を治めていこうとする者は真っ先に金のことを考えないといけない」(ウェブ版「スポーツ報知」五日付)とのべています。これが間違いのもとです。「はじめに財政ありき」で、いのちと健康を支える医療制度でつじつま合わせをするのは本末転倒です。

 高齢者福祉の基本法とされる老人福祉法は基本理念を次のように明記しています。「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として…生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする」(第二条)。この理念を後期高齢者医療制度は踏みにじっています。

 欧米の内科学会が共同で起草した「医師憲章」は、「医師には、医療における不平等や差別を排除するために積極的に活動する社会的責任がある」とのべています。医師の責務にとどまらず、医療の発展を望む社会として、医療に「不平等や差別」を持ち込む後期高齢者医療制度は「排除」しなければなりません。

お年寄りの声を聞け

 自民党がCMを流し始めた沖縄は長寿県として有名です。その沖縄で後期高齢者医療制度に大きな怒りの声が上がっています。沖縄県老人クラブ連合会は二十六日、「いのちと健康を年齢で差別する、そのような国・政治に未来はない」と即時撤廃を求めるアピールを発表しました。

 お年寄りを「大事にする」というなら、後期高齢者医療制度は廃止する以外にありません。



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