2008年6月4日(水)「しんぶん赤旗」
アイヌは先住民族ですか?
〈問い〉 アイヌが先住民族かどうかについて、日本共産党はいまどう考えていますか?(千葉・一読者)
〈答え〉 アイヌは先住民族であると、日本共産党は考えています。アイヌは、北海道、千島、サハリンを中心に独自の言語、文化、習慣、生活様式を持って生活していました。14世紀ころまでにはアイヌ文化の特色を形成、徳川時代には松前藩の圧迫をうけますが、民族の独自性を維持してきました。
しかし、明治政府は、アイヌ語使用や生活慣行を制限・禁止する「強制同化政策」をおしすすめ、アイヌ社会に決定的な打撃を与えました。1899年(明治32年)アイヌの生活安定を図る名目に「旧土人保護法」が制定されますが、同化をすすめる差別的なものでアイヌの窮状は改善されませんでした(同法廃止は1997年)。
北海道では1961年度から国の支援の下に生活環境の改善策をとってきましたが、今なお、アイヌの年収、進学率は道民一般と比べて低く、生活保護率も高いのが実態です。半面、84年以来の「アイヌ新法」制定運動や「アイヌ文化振興法」(97年制定)に基づく文化伝承のとりくみで、アイヌは先住民族としての意識を高めています。
国連では、80年代初頭から先住民族の諸権利について本格的な検討を始めました。世界各国に約3億7千万人の先住民族が居住するとされ、近代国家の同化政策がさまざまな問題を引き起こしているからです。
93年の「国際先住民年」を経て、昨年9月には、国連総会で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されました。その内容は、民族自決権の保障をはじめ、文化や言語の保持から土地に対する権利まで多岐にわたっています。宣言に反対したアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにしても憲法や法律で先住民族の権利を広く定めており、権利保障は国際的趨勢(すうせい)です。
日本政府は国連宣言に賛成票を投じながら、宣言には先住民族の定義がないとしてアイヌ民族を先住民族と認めていませんが、日本でも文化振興法にとどまらない全般的施策が求められます。国会では全会派からなる「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」がつくられ、アイヌを先住民族と認め、政府に総合的施策を求める国会決議の今週中の採択をめざしています。(高)
〔2008・6・4(水)〕