2008年6月8日(日)「しんぶん赤旗」

主張

海外派兵恒久法

要綱案づくりをやめるべきだ


 自衛隊をいつでも海外に派兵できる海外派兵恒久法づくりに向けた動きが急ピッチで進んでいます。

 恒久法づくりを進めている自民党と公明党の与党プロジェクトチームは、会期末までに法案の要綱案をまとめる予定です。要綱案ができれば、八月末に召集するといわれる臨時国会に向けて法案化し、政府の手で提出させることを狙っています。自民、公明に民主の国会議員を加えた「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」も同時並行で法案づくりを進めています。政府と一体となった恒久法づくりは危険な状況を迎えています。

国際会議での売り込み

 石破茂防衛大臣は先月三十一日、アジア太平洋地域の防衛大臣らが参加した第七回アジア安全保障サミットで演説し、「われわれは国際平和協力活動のため一般法(恒久法)をつくらなければならない」とのべ、恒久法への執念をみせつけました。与党の動きをバネに、国際社会の支持につなげて制定作業にはずみをつける狙いをこめた重大発言です。

 海外派兵が必要になるたびに特別措置法をつくり、国会承認を受けるのがいまのやり方です。恒久法はこれをやめ、アメリカなどから要求があれば、政府の判断で、自衛隊をいつでもどこにでも期間も限定しない派兵をめざすものです。

 恒久法の制定を急ぐのは、来年一月に期限が切れるインド洋での給油支援活動と来年七月で期限が切れるイラクでの空輸支援活動を、特別措置法の改定によらないで自動継続するのが当面の目標です。テロ特措法延長のさい、参議院で否決されたのに、衆議院で自民、公明の数の力で再議決を強行して国民の怒りを買ったような事態を避けるのも狙いです。インド洋からもイラクからも自衛隊を即時撤退させよという国民の願いをふみにじるようなことを許すわけにはいきません。

 しかも検討されている恒久法の内容がじつに重大です。連日の与党プロジェクトチームの会議では、人道復興支援だけでなく、後方支援や警護、治安の活動、武器使用基準の緩和についても検討しています。イラク派兵差し止め訴訟で確定した名古屋高裁判決は、イラクで米兵や軍事物資を空輸することが米軍の武力行使との一体化にあたり、憲法違反だと断罪しています。後方支援を当たり前とする議論一つとっても恒久法が憲法違反であるのは明白です。

 治安維持や警護活動の容認をめざす議論も見過ごしにできません。名古屋高裁判決はイラク情勢を「国際的な戦闘」と認定しました。治安維持活動といいかえても、イラク派兵が違憲であることにかわりありません。警護も武器使用を伴い、戦闘行動に発展する可能性がつよい活動です。許されるはずはありません。

 与党が検討している恒久法は、海外で日本を自動参戦の道にひきこむ違憲立法です。戦争を放棄した憲法九条に真っ向から違反する亡国の議論はただちにやめるべきです。

対米従属の姿勢をただせ

 海外派兵恒久法は、アメリカの先制攻撃戦略にそって日米安保条約=軍事同盟を世界的規模に拡大するためにアメリカが求めているものです。アメリカの求めに応じて、自衛隊を戦場に送り込み、米軍とともにたたかわせるのが本質です。平和な日本をつくる国民の願いがだいなしにされるのは明白です。

 アメリカいいなりの恒久法ではなく、憲法九条を生かした自主的外交こそ、いま日本がやるべき課題です。



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