2008年6月8日(日)「しんぶん赤旗」

大詰め国会 記者座談会

共産党全力

後期高齢者医療廃止・派遣労働者保護

問われる民主の姿勢


 国会は今週、十五日の会期末に向け大詰めの攻防を迎えます。最大の焦点は、六日に参院を通過した後期高齢者医療制度廃止法案(野党四党共同提案)の衆院審議の行方です。各党は国民の願いにどうこたえるのか―。担当記者で話し合いました。


 A 後期高齢者医療制度廃止法案の参院通過は、廃止を願う圧倒的な世論と、参院で多数になった野党の力が見事に結実したといえる。

 B 一方、政府・与党はいまだに、「制度自体は間違っていない」などといいつづけ、若干の見直しでやりすごそうとしている。国民の怒りは、七十五歳以上という年齢だけで差別するという制度の根本に怒っているのに、まったくなにもわかっていない。末期的な症状だ。

強引な議会運営

 C 問題は、衆院での法案の扱いだ。九日におこなわれる与野党国対委員長会談での協議がその一歩だが、与党は、参院での可決の重みと、制度の根本的な欠陥を素直に認めるべきだ。衆院でしっかりと審議をおこない、しかるべき結論を得られるよう対応すべきだ。国民がかたずをのんで見守っている。

 D 同時に、衆院の審議では、野党の役割も問われることになる。日本共産党は、廃止法案の成立を最優先課題とし、その審議に全力を尽くす構えだが、野党第一党の民主党の態度が問題だ。参院では、廃止法案審議を強引な議会運営で混乱させ、与党だけでなく野党からも批判を浴びた。

 B 参院の審議をめぐっては、三日におこなわれた四野党の書記局長・幹事長会談で、参考人質疑とともに地方公聴会の実施も含めて、審議の充実に向けて努力することが確認された。日本共産党が繰り返し主張してきたものだ。にもかかわらず、それから数時間後の参院厚生労働委員会理事会で、民主党の委員長は地方公聴会抜きの採決日程を一方的に宣言して、最後までその日程を押し通した。

 E 日本共産党の市田忠義書記局長は、「これでは会談はなんだったのかということになる」と厳しく批判したが、そのとおりだ。各党間の最高レベルの合意がいとも簡単にほごにされるのでは、会談をおこなうこと自体が無意味になる。

問責決議めぐり

 A さらに奇妙なのは、民主党が週明けにも提出するとしている問責決議案をめぐる動きだ。福田内閣が問責に値するというのは火を見るより明らかだ。しかし、問責は非常に重いもので、理由も、出す時期も、国民から見て道理があり、最も効力をもつものでなければならない。

 E それなのに、四日の四野党書記局長・幹事長会談の場で民主党が公言した提出理由には正直驚いた。後期高齢者医療制度問題は付け足しで、「自民、公明、民主の『協調』関係を『対決』に転換させたい」「通常国会をこのまま終わらせてはならず、ヤマをつくりたい」などというものだ。

 C 民主党の党内事情優先というわけだ。びっくりしたことがもう一つある。後期高齢者医療制度廃止に向けて、四日には東京・巣鴨のとげぬき地蔵の商店街で、四野党の党首らも参加して街頭宣伝がおこなわれた。ところが、小沢一郎党首は、顔を見せただけで、最後まで一言も演説しなかったことだ。

 D 取材に行ったが、聴衆からは、「演説しないとは人をばかにしている」との声まで上がっていた。共産党の志位和夫委員長が「廃止・撤廃の一点で力をあわせ、一刻も早くこの間違った制度をやめさせよう」と訴えて割れるような拍手をうけたのとはまったく対照的だった。

 B 十一日には今国会二度目の党首討論がおこなわれることが決まっていた。ところが、自民党の伊吹文明幹事長は六日、民主党から自民党に、党首討論を「とりやめてほしい」と連絡があったことを明らかにした。一方で、問責決議案を出すといい、他方で、政党として最も大事な国会での論戦を避けるとは…。

 D いま、永田町では、「問責提出は党首討論つぶしが目的だ」との見方まで広がっている。

 A 「協調から対決へ」というのもおかしな話だ。それなら、問責うんぬんをいう前に、悪政推進で与党と「協調」してきた自らの態度を振り返ることこそ必要ではないか。

自公民の3党で

 E 自民、公明、民主の三党は、この間、宇宙開発の軍事利用に公然と道を開く宇宙基本法、政官財の癒着をさらに拡大する国家公務員基本法と、非常に重大な中身を持つ法案について、水面下で修正をおこない、ろくな審議もなく成立させてきた。

 C 三党は、少年法改定案も修正して、三日に衆院を通過させ、今国会で成立させる構えだ。法曹界はもとより、被害者家族の間でも意見が割れているのに。

 B 憲法の問題でも、五月には、三党の改憲派議員らがつくる新憲法制定議員同盟が主催し、「新しい憲法を制定する推進大会」が開催されるなど、危険な流れがつくられつつある。

 D 九日には、衆参両院議院運営委員会の合同代表者会議で、「改憲原案」の審査権をもつとされる憲法審査会の規程づくりが協議される予定だ。

態度の違い鮮明

 A 最終盤国会の様相をみると、日本共産党の役割がますます重要になっている。

 E 後期高齢者医療制度廃止の問題では、いま政府・与党が制度存続の言い訳として、二〇〇〇年、健康保険法改悪の際の付帯決議を持ち出している。高齢者医療について別建ての制度、つまりいまの後期高齢者医療制度の原型づくりの付帯決議に野党も賛成したというものだ。

 C 日本共産党だけが反対し、民主と社民は与党との共同提案に名を連ねた。二〇〇六年に後期高齢者医療制度をつくる法案が強行されたが、当時厚労相だった川崎二郎氏は、「あのとき(国会審議で)本質をついていたのは共産党だけだった」と発言している。

 B 今国会では、日本共産党は、労働者派遣法を“派遣労働者保護法”にするための抜本的な法改正を強く求めてきた。この点でも民主党の態度との違いは明らかだ。

 A 五月二十三日の四野党書記局長・幹事長会談で、市田書記局長が「同法改正に向け、四野党が協議し実現を」と呼びかけ、民主党の鳩山由紀夫幹事長は政策担当者による協議を約束した。にもかかわらず、民主党はその後、一度は単独で「改正」案を提出しようとし、現在も協議はおこなわれていない。

 D 最終盤国会は、後期高齢者医療制度廃止法案の成立、労働者派遣法改正をめざすたたかいを軸に、政党の役割がいよいよ正面から問われることになる。


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