2008年6月12日(木)「しんぶん赤旗」
改定少年法強行の自公民
拙速の批判免れず
原則非公開の少年審判の傍聴を被害者・家族に認める改定少年法が十一日成立しました。同法は少年審判の果たしてきた役割を変質させる恐れが極めて強いものです。
日弁連をはじめ強い懸念がだされており、被害者団体の意見も二分しています。国民的合意は得られておらず、わずかな審議時間で成立させたことは、拙速の批判を免れません。
●「心理的に委縮」
民主党は当初、改定に反対していましたが、突然、与党と修正で合意し、衆院では修正案提出から三時間、参院でも二日間の委員会質疑で審議を打ち切りました。
少年法は加害少年の更生を目的とし、少年審判では裁判官が対話を通して少年の内面に向き合い、処分を決めます。
衆参の参考人質疑では、被害者の傍聴について「少年が心理的に委縮し、事実関係の説明や心情を語ることが困難になる」「(審判廷の家庭的な雰囲気が)被害者に対する配慮から不可能になる」などの意見が相次ぎました。被害者の傍聴が更生に支障をきたすことになれば、ひいては新たな被害者を生み出すことにつながる恐れもあります。
与党と民主党は、現行少年法の理念の範囲で、傍聴を求める被害者の心情に応えるものだといいます。
しかし、日弁連の角山正・副会長が「二つの矛盾した目的に裁判官が仕えることになる」と指摘したように、審判の教育的・福祉的機能と、被害者傍聴は両立しません。
●具体的検討なし
改定案がまともな検討を経ていない実態も明らかとなりました。
事件から間もない時期に開かれる審判では、少年と対面した被害者が感情的になるなど、不慮の事態が起こる懸念があります。法制審議会委員の酒巻匡・京大教授は、このような事例について具体的に検討していないことを明らかにしました。
加害少年の多くが虐待された経験を持ち、強い対人不信などの特質があると指摘されています。共産党の仁比聡平参院議員が、このような少年に被害者の傍聴が与える影響をただしたのに対し、民主党の細川律夫衆院議員は「詳しく検討していない」と答弁しました。
各党の姿勢も問題です。公明党は、二〇〇〇年の少年法改定の際は、被害者の傍聴は少年の適正な処分を困難にするなどと反対しましたが、今回、そのことに対する説明はありません。
民主党も、加害少年が十二歳未満の場合は傍聴を認めないとする修正案を与党と共同提出しましたが、少年院送致の年齢を「おおむね十二歳以上」に引き下げた二〇〇七年の少年法改定には、引き下げの根拠が明確でないと批判していました。
今国会での改定強行は、少年司法手続きをめぐる対立をいっそう深刻化させるものです。(佐久間亮)