2008年6月15日(日)「しんぶん赤旗」

自公の派兵恒久法検討

「警護活動の追加」狙う

「掃討作戦」参加に備え


 自衛隊の海外派兵を常時可能にするための恒久法を検討する自民党と公明党のプロジェクトチームが、国会の会期延長に伴って議論を継続させています。その焦点になっているのは、自衛隊の活動のメニュー(活動類型)に「警護活動」を追加し、武器使用権限を拡大することです。

 「警護」とはどのような活動か―。自民党は、警護活動の「四類型」として「随伴」「配置」「巡回」「駆けつけ」を挙げています。この間の議論で、「随伴」とは、移動・移送中の物や人への付き添い、「配置」とは指定される建物や施設など対象物への張り付き、また「駆けつけ」とは危機に際して応援に駆けつけることなどとされています。

 自民党は「なぜ、警護活動が必要か」として、「現在の(イラクなどでの)活動は、他国に警護してもらっている」「目前で、危機にある人を放置することはできない」などの「理由」をあげています。

 この「理由」が示すように警護活動の前提は攻撃の危険とその予防・排除です。戦闘部隊による任務としての武器使用が必要になります。

「対テロ」を想定

 これまで海外での武器使用について政府・与党は、正当防衛や緊急避難だから、「武力の行使」にはあたらないとごまかしてきました。任務遂行のための武器使用はこの説明の放棄になります。

 自民党メンバーの一人は「警護が武器使用を伴うなんてことは当然だ。憲法の範囲でやれといわれれば厳しい」と言い放ちます。「憲法の制約」など意識していたら、警護活動などできないというホンネです。

 さらに、議論の中では自民党メンバーから「積極的な『見つけ出し』を除く、“掃討作戦”を可能にし、点から線、『面』の警護で安全を守る必要がある」との発言や資料も出されています。

 「面」で安全を確保するというのは、攻撃があって初めて反撃するということを超えて、一定の範囲を事前に「調査」し掃討作戦で安全を確認する。そして、攻撃に際しては、迎撃・反撃するだけでなく、追撃して掃討作戦を展開し、一定の地域全体の安全を確保するということにほかなりません。米軍がイラクやアフガニスタンで展開している「対テロ」掃討作戦を想定してのものです。

武力行使の危険

 移動中の他国の部隊や人の警護(随伴活動)は、警護対象の動き次第で活動範囲が大きく変化する危険なものとなります。オランダ軍やアメリカ軍の車列を自衛隊が警護するという場合を想定すると、車列の動きに従属して自衛隊も常に移動しながら、攻撃に備えることになります。

 また、駆けつけ警護では、文字通り戦闘状態への参加が問題になります。警護活動のメニューへの追加は、海外での武力行使に直結する危険なものです。

 与党プロジェクトの会合では、「非戦闘地域」という限定があるから武力の行使にはならないという説明(政府)もされています。

 しかし、そもそも「非戦闘地域」という概念は、戦争の現場であるイラクに自衛隊を派兵するために創作された「説明概念」にすぎません。四月の名古屋高裁の判決でも政府の「非戦闘地域」という認定が覆され、バグダッドは戦闘地域であると判断されました。

 警護活動では、イラクのサマワで輸送部隊や補給部隊の車列を戦闘部隊の装甲車で囲み、攻撃があれば反撃し撃退することまで想定しています。これが憲法九条が禁じる海外での武力の行使につながることは明白です。(中祖寅一)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp