2008年6月15日(日)「しんぶん赤旗」
捜索現場 立ち尽くす家族
岩手・宮城内陸地震
十四日の土曜日の朝、岩手・宮城両県を襲った震度6強の激しいゆれ。土砂にのまれた温泉宿では七人が生き埋めになり、がけ崩れで道路から押し流されたバスが転落しました。落ちた橋、寸断された道路、孤立した集落…。避難所で夜を過ごす住民らは余震におびえ、一刻も早い救出を待ちました。
がけの崩落に巻き込まれて工事作業員三人が行方不明になった宮城県栗原市花山の現場では、家族や会社の同僚が見守るなか、二人が搬出され、死亡が確認されました。亡くなった作業員の妻らは涙を流して悲しみを訴えました。
「発見」「二名発見」。午後六時五十八分、レスキュー隊員の声が響きました。捜索開始から約四十分後でした。
現場は約百三十メートルの高さのがけ。地震発生当時、十数人の作業員が工事を行っていました。がけは以前から崩落の危険が指摘されており、工事はがけに防護ネットを設置するためでした。
捜索中、そして発見後も「ズズン」というにぶい音とともに地面が何度も揺れ、「退避」という言葉もとびかいました。
発見から約四十分後、一人目が現場から搬出されました。レスキュー隊のかついだタンカには青いブルーシートに包まれた男性の姿がありました。中をのぞいた女性は「あー、お父さんがいた」と叫び、涙を流して後を追いかけていきました。
捜索にあたった栗原市消防本部の担当者は「ほかの現場に機材が使われていて、スコップしかない状態だったため、午後六時過ぎに仙台市消防局のレスキューが合流するまで捜索にかかれなかった。道が封鎖され重機が現場に入れないので作業も進まない。もどかしい」と話しました。
泣き崩れる妻三人の肩を、亡くなった作業員らの同僚の男性が支えていました。「いまは、ただ早く残りの一人を見つけてほしい。それだけが願いです」と語りました。