2008年6月16日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」
市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長は十五日、NHK「日曜討論」に出席し、日朝協議や福田康夫首相への問責決議可決と国会対応、後期高齢者医療制度の問題について、与野党幹事長と討論しました。司会は影山日出夫解説委員。
日朝協議
問題解決の一歩――平壌宣言に即して国交正常化への外交努力必要
冒頭、日朝協議の新たな動きのなか、拉致問題で日本政府の対応をどう見るかがテーマとなりました。
市田 私たちは、日朝平壌宣言というのがあるわけですから、それにもとづいて外交的努力で日朝間の諸懸案を解決すべきだという立場を一貫してとってきました。そういう立場からいって、今回、(北朝鮮が)拉致は解決済みだといっていたのを、拉致問題の再調査を行うことや、「よど号」乗っ取り実行犯の引き渡しへの協力を約束し、日本政府が経済制裁の一部を解除することで合意したことは、私は、日朝問題解決への一歩だと思います。
ただ、この一歩を日朝平壌宣言に即して日朝国交正常化につなげるための外交努力は引き続き必要ですから、そういう方向で実ることを希望したいと考えています。
首相問責決議
福田内閣は問責に値するが、時期は適切でなかった
この後、福田康夫首相に対する参院での問責決議可決後の国会の対応が議論となりました。
市田 問責には賛成しましたが、共同提案者にはなりませんでした。福田内閣が憲法違反の自衛隊海外派兵に固執したり、七十五歳以上のお年寄りに差別医療を押し付ける後期高齢者医療制度を四月一日から強行したとか、道路特定財源の問題についても無駄な高速道路をつくり続けることに固執するとか、そういう点で、問責に値する内閣だという点は、われわれは以前から主張してきましたし、今もそう思っています。
ただ、問責というのは重いもので、それを出せば、福田内閣を解散・総選挙、あるいは総辞職に追い込めるという時期に出さないと、何度も出せるものではないと思います。
それと、論戦と国民世論で福田内閣を追い込んでいくというのが政党のとるべき正道だと思います。党首討論が行われる十一日に、なぜ党首討論をやらないのかと、私、(民主党幹事長の)鳩山さんに率直にいいましたら、「党首討論をやれば、福田さんはおそらく大いに審議をやろうと“抱きつき作戦”に出てくる。その後に問責を出せば、映りが悪い」とおっしゃったんですよ(司会者「ほう」)。審議をやろうといわれたら、“抱きつき”を拒否して、どちらが正しいかを堂々と議論すればいいわけです。
だから、野党そろって(賛成した)と鳩山さんはおっしゃったけれど、正確にいうと、時期は適切ではなかったし、ここは慎重に考えるべきだと思っています。
後期高齢者医療制度
廃止法案――提案者の責任を果たし、審議入りして議論を
司会者は「市田さんから『議論を尽くすべきだ』という声もあった。民主党はいっさい国会審議に応じられないといっているが、後期高齢者医療制度廃止法案を衆院で審議しないまま、今週で国会は終わってしまっていいのか」と問いました。鳩山氏が「それは仕方ありませんね」と答えたのに対し市田氏は次のように述べました。
市田 参院で廃止法案を四党共同で出し、可決されて衆院に回ってきたわけです。いろいろあったけれども、十一日の問責決議可決の翌日の衆院本会議でこの法案の趣旨説明をやり、質疑を始めようということになっていたわけです。
共産党としては、自民党に申し入れて、きょう審議をやることは賛成だ、趣旨説明も自公から質問の通知がありましたから、徹夜で答弁まで準備しました。やろうじゃないかといったら、自民党からは、野党四党を代表して共産党が趣旨説明をやり、答弁するならいいけれども、野党間の合意をとってくれといわれました。
ところが民主党などの合意が得られないためにいまだに審議に入っていません。私は他の党が趣旨説明や答弁をやらないのなら、廃止法案を出した党の責任を果たすために、たとえ一党であっても質疑をやるために、この場で自公のみなさんも、後期高齢者医療制度に固執しないで、見直し案が正しいのか、廃止法案が正しいのか、審議入りし、大いに国民の前で議論する約束をしていただきたいと思います。
与党見直し案――年齢で差別する“設計図”に問題。“補修”だけではまずい
つづいて、政府・与党が示す後期高齢者医療制度の見直し案について議論になり、市田氏は次のように述べました。
市田 今多くの国民が怒っているのは、七十五歳という年齢を重ねただけで、別枠の保険に強制的に組み入れられて、差別医療を押し付けられる、これは人間の尊厳を踏みにじるものじゃないかということです。野中(広務元官房長官)さん、中曽根(康弘)元総理大臣、古賀(誠自民党選挙対策委員長)さん、堀内(光雄)元総務会長など、いわば与党の中にもこの制度はまずいという意見があります。
厚生労働省の説明は、七十五歳以上のお年寄りは、病気にかかりやすいし、治療が長引く、やがて避けがたい死を迎える、そういう人々に医療費をたくさんかけるのはもったいない(というものです)。「医療費削減先にありき」で、そういう人々に差別医療を押し付ける。ここに国民は怒っているわけです。
私は設計図が間違っているときに、補修計画だけいくらやってもまずい。説明が不足していたんじゃなくて、制度の根幹が間違っているわけです。だから、いったんはこの後期高齢者医療制度を廃止して、どういう制度がいいのか大いに各党が議論すればいいと考えます。
後期高齢者医療制度を廃止した場合、どのような仕組みにするかの議論となりました。
公明党の北側一雄幹事長が、これまで老人保健制度と別枠の高齢者の医療制度が必要だという点では共産党以外の各党が一致していたなどと主張したのに対し、市田氏は次のように述べました。
市田 老健制度にはもちろん問題がありました。しかし、それは国保なら国保という保険制度のもとで、七十五歳以上の人でも同じ保険に入りつづけて、ただ窓口負担を高齢者に軽減するといういわば財源調整の仕組みだったわけです。
これと今度の後期高齢者医療制度とは根本的に違います。まったく(七十五歳以上を)別枠にしてしまって、しかも保険料が一時的に下がる人もいますが、二年ごとに見直しされて際限なく上がり続けるという仕組みになっているわけです。
これはいったん廃止して、たとえば国保についていえば、減らし続けてきた国庫負担を増やすとか、あるいは窓口負担をもっと軽減するとか、雇用の改善で国保に非正規労働者が大量に追い込まれることがないようにするとか、そういう新しい制度についてはおおいに議論すればいいと思います。
財源問題
社会保障削減・消費税増税ではなく、大企業・大資産家への応分負担で
最後に、財源問題が論議になり、年末に政府・与党が計画する税制の「抜本改革」や毎年二千二百億円の社会保障費を削減する計画について各党が意見を述べました。
市田 社会保障費を削減するべきではありません。聖域となっているところにメスを入れるべきです。たとえば、政党助成金は、共産党以外の各党が年間三百二十億円もらっておられるが、これはなくす。道路特定財源を福田首相が一般財源化するといいながら十年間維持するという法律を強行した(これをきちんと一般財源にする)。条約上義務付けられていない在日米軍への「思いやり予算」、こういうものはカットすることが必要です。
入りの問題でいえば、消費税の増税はやるべきではありません。この十年間で七兆円も行き過ぎた減税が行われた大企業や大資産家に応分の負担をしてもらうべきだと思います。