2008年6月16日(月)「しんぶん赤旗」
国産米 不足の恐れ
政府「減反強化」の異常
日本の主食・米が足りなくなるとの指摘が現実味をおびてきました。米の消費が伸び流通段階では国産米の奪い合いさえ起きています。国際的にも米不足が深刻さを増しています。ところが自民・公明党政府は、「過剰作付けがある」といい、水田減反(生産調整)を上乗せしようとしています。これでは米不足に対応できません。(中沢睦夫)
「消費増」「07年産米不足」
対応できない「計画」
日本の水田は、約四割が米を作らない減反(生産調整)をしています。二百七十万ヘクタールのうち百六万ヘクタールが転作や耕作放棄されています。
政府は、今年は減反をさらに十万ヘクタール分上乗せせよといいます。その理由は、主食用米の消費が三万ヘクタール分減退するとの予想と、去年の“過剰作付け”が七万ヘクタール分あるからといいます。
しかしこの二つの理由は成り立たなくなっています。
米消費上向き
米の消費減退は下げどまり、春先から上昇傾向になっています。
農水省の「米の一人一カ月当たり消費量」調査(四月から調査とりやめ)は、それまで対前年比で減り続けていたものが、三月に全世帯で0・6%増に転じました。
総務省の家計調査でも米消費の上向き傾向がわかります。全国二人以上世帯の米購入量をみると、三月が前年同月比6・1%増、四月が同1・9%増となっています。同調査では、小麦製品の購入量も調べていますが減っています。四月のパンは前年同月比で6・1%減、カップめん18・3%減、スパゲティ13・3%減でした。
輸入小麦が値上がりをした影響でパン・めんが高くなり、相対的に安くなったご飯に消費が移ってきています。農林漁業金融公庫の昨年十二月アンケートでは、三人に一人が米の消費を増やすと答えていますが、これを裏付けているといえます。
米入札に殺到
農水省は、昨年の国産米は二十一万トンが過剰だとしてきました。「本当に米は余っているのか。去年の生産量が違っていたのか、それとも大手卸売会社が買い占めているのか」。集荷会社の役員は、政府の説明を疑問視します。昨年産米がほしいとの引き合いが中小の米卸会社からあるといいます。「『何か米はないか』といわれるが、契約ずみなので全く余分はないと答えるしかない」と役員は話します。
流通段階で国産米不足が象徴的にあらわれたのは、九日に実施された政府在庫米の一部売却の入札結果です。二〇〇七年産に買いが殺到、平均申し込み数量が八倍という“取り合い”になったのです。
価格もはねあがりました。新潟一般コシヒカリの場合、昨秋段階で農水省が買い入れた六十キロ一万五千九百二十四円の米は、七千円余り高い同二万三千百十二円の値がつきました。ほかの六銘柄米も軒並み上昇です。
米穀流通に詳しい農民連ふるさとネットワークの横山昭三事務局次長は、加重平均では27%もの暴騰であり農水省が得た利益は総額三億円になると指摘。「過剰だといいながら農家から安く買って、業者や消費者に負担を押しつける。農水省はいったいなにをするところか」と批判します。
〇七米穀年度(〇七年十一月から〇八年十月)の繰り越し在庫はマイナス二十二万トンでした。八月から収穫できる新米二十二万トンを早食い(前借り)して供給をつないでいます。消費減少が予想以上に少ない「米の激変」のなか、ゆとりのない米需給の危険性が露呈しています。
MA米 国際的ひっぱく
買いあされない
日本はこの数年、外国産米を七十七万トン輸入してきました。半分近くがアメリカ米です。一九九五年のWTO(世界貿易機関)農業協定にもとづくミニマムアクセス(MA=最低輸入機会の保証)による輸入です。
MA米は低価格米として、主食用に十万トンのほか、みそやしょうゆ、せんべいなど米加工用に二十万トン、援助用など合わせて五十万―六十万トンが使われてきました。余った分は最高百八十九万トンまで積みあがりました。管理経費は一万トン一億円以上です。
しかしMA米も在庫が急減する様相をみせています。一つは、高騰する輸入の飼料穀物にかわるエサ用需要です。二〇〇七年度には五十八万トンを処理、MA米在庫は今年三月末では百三十万トンに減っています。
福田首相は三日にイタリア・ローマで開かれた食料サミットで〇八年に三十万トン以上の援助米を放出することを約束しました。エサ用に七十万トンを上限に処理します。一気に在庫が減ることになります。(グラフ)
一方、MA米の輸入は、国際価格が三倍にも暴騰するなか難しくなっています。〇七年度最後となったMA一般輸入米の第十回入札では、六万トンあまり買い付けようとしたものの「国際価格が高すぎ、農水省の基準価格に合わなかったり、輸入商社の応札がなかった」(食糧貿易課)といいます。今後はアジアで、水害や干ばつなどで米づくりがいっそう不安定になります。
一九九九年当時、日本共産党の中林よし子衆院議員(当時)はMA米は協定上の義務輸入ではなく、「政府の勝手な解釈だ」と指摘していました。最近は政府も義務とは言わなくなりました。
義務的輸入をやめた場合、加工用などMA米需要は国産で用意する必要があります。農民連の笹渡義夫事務局長は、「減反拡大などとんでもないことだ。輸入は大失態になる。増産に踏み切るべきだ」といいます。
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解決策 共産党「農業再生プラン」
ゆとりある需給計画と棚上げ備蓄
生産者米価保障と環境支払い
転作作物に主食用米なみ手厚い支援
日本共産党は、三月に発表した農業再生プラン(「食料自給率の向上を真剣にめざし、安心して農業にはげめる農政への転換を」)のなかで、日本農業の柱であり主食の米の需給と価格の安定をはかるために総合的な対策を提案しています。
現行は百万トンを適正在庫水準にしています。再生プランでは、国産米不足がないように年間百五十万トンの備蓄をします。二年続けて作況指数が90(平年作=100)という不作が続いても安心できる量です。
不作がなければ放出しないで積み上げる「棚上げ備蓄」です。三年以上経過した米はエサ米や米粉など主食用以外にします。現行は売れた量だけ買い入れる「回転在庫方式」です。
国産米需要を減らし、生産者米価下落要因となっている輸入米(ミニマムアクセス米)は、義務的輸入は中止します。
水田を有効に使い、自給率が極端に低い作物を転作をすることが必要になっています。麦や大豆、飼料作物は価格保障と所得補償の組み合わせで増産をうながします。
湿田には非主食用の稲をつくります。地産地消のもとで米粉パンや加工品の支援、茎や葉も丸ごとエサにできる発酵飼料稲や実をとる飼料米の実用化をします。
再生プランでは、現在のような強権的なやり方をやめ「転作作物の条件を思いきって有利にし、農家が自主的・自発的に選択できる」方法を強調しています。
政府は“減反目標面積を達成すれば生産者米価が安定する”といいますが、くず米も混ぜた低価格米が出回るもとでその保障はありません。
再生プランでは「価格保障制度として農家の販売価格が平均的な生産費を下回った場合、その差額を公的に補う『不足払い制度』を実施します」と提案しています。産地や品質を考慮しながら生産コストを償い、一俵六十キロで一万七千円以上を保障します。さらに水田のもつ環境保全の役割を評価して十アール一万円、一俵で約千円を上積みし一万八千円の収入を確保できるようにします。
この措置をとれば、米価が下がっても稲作は続けられ、消費者には安定的においしい国産米を供給することができます。