2008年6月18日(水)「しんぶん赤旗」
主張
いっせい休漁
漁業の持続を保障する対策を
魚は、日本人の食生活と健康に欠かせません。その漁業が、燃油価格の高騰で経営が立ち行かなくなり、全国規模でいっせいに休漁しようとしています。大日本水産会、全日本漁協連合会(JF全漁連)、日本かつお・まぐろ漁協など、漁船関係の十二団体が出席した「緊急燃油対策会議」で確認したものです。
第一弾として、十八、十九日の二日間、スルメイカ漁の休漁が行われようとしています。
燃油高騰の影響うけ
漁船による漁業は、経費に占める燃油の比率が高く、現在では、30%―40%といわれています。しかも漁網、漁具などの資材も石油製品が多く、軒並み値上がりしています。出漁すれば赤字という状況にあり、このまま石油の値上がりが続くと、漁業者の三、四割が廃業に追い込まれると予測されています。
政府も燃油高騰緊急総合対策を講じていますが、原油の値上がりへの直接的な施策はなく、省エネ設備や技術に転換した場合や、燃油タンクの整備など投資にたいする助成が中心です。また「燃油価格の上昇の影響を、消費者や小売業者に正しく理解してもらう」ことなど、漁業者が「自助努力」した場合の援助であり、小売価格に転嫁させる対策が中心です。
事態は放置できません。原油値上がりの大きな原因である投機の規制はもとより、省エネ対策や適正な価格設定なども長期的な課題として当然です。同時に最も求められるのは現に従事し、危機に直面している漁業者の経営継続をはかることです。
日本の食料自給率は39%まで低下していますが、そのうち3%(ポイント)分を支えているのは国内漁業です。国内漁業の崩壊は、今でも低い食料自給率をさらに押し下げることになります。
現在、日本の水産物自給率は低下傾向にあり、二〇〇六年には59%と輸入依存が高まっています。世界的にも魚の需要が増え、サケやマグロなどで日本の商社が買い負けるという事態も起きています。魚も外国頼みが通らなくなっています。
燃油高のために出漁できなくなっている漁船への手だてを急がないと、長期的に存続可能な産業である漁業を崩壊させることになってしまいます。EU(欧州連合)などでは、燃油高騰対策として漁業者に直接助成しているといわれますが、日本でも漁業用A重油や軽油に対する税の減免措置の継続・拡大とともに、燃油価格にたいする補てんを検討すべきです。また、休漁にたいするつなぎ資金などの対策も必要です。
漁業者がこうした危機に直面しているにもかかわらず、市場では、大手スーパーなどによる低価格での買いたたきが横行しています。輸入品の野放しと並んで漁業者に大きな負担を強いている大手スーパーなどによるコストを無視した価格の押しつけについては、流通関係業者が対等の立場で協議する場を設けるべきです。大手の流通業者だけでなく、漁業者や中小業者の実態・要求が反映できる体制確立の努力が重要です。
漁業再生への契機に
日本は、世界的にみても豊かな漁場を持っており、漁獲技術も優れています。それでありながら、魚場の荒廃や漁業者の減少が続き、後継者難も深刻です。
国際的な食料不足が大きな問題にもなっています。今回の休漁を一時的な問題と受けとめず、沿岸・沖合漁業を中心に漁業再生をはかる、国民的議論の契機にしたいものです。