2008年6月21日(土)「しんぶん赤旗」
通常国会振り返る
共産党質問に「一筋の光みえた」
論戦力で政治動かす
第百六十九通常国会は、昨年九月に福田康夫首相が就任して以降、内政・外交の全般にわたる最初の本格論戦の舞台でした。日本共産党はこれにどう挑み、どのような役割を果たしたのか――。昨年の参院選結果をうけ、国民が自民・公明の政治に代わる新しい政治を探求するなか、これほど、政党がよって立つ足場と、“論戦力”の試された国会はありませんでした。そのなかで、日本共産党国会議員団の論戦力を象徴した場面はいまも鮮やかです。(小泉大介)
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現場の実態から迫る
「日本のモノづくりを支えている労働者にこんな働かせ方をさせていて、日本の将来があるのか」「高齢者のみなさんが、この国に生まれてよかったと思えないような政治に未来はない」
前者は、二月八日の衆院予算委員会で労働者派遣法の抜本改正を求めた志位和夫委員長、後者は三月十四日の参院予算委員会で後期高齢者医療制度の撤回を求めた小池晃政策委員長。首相はじめ全閣僚を前にした渾身(こんしん)の追及でした。
首相も認める
労働者派遣法改正問題では、派遣労働者をモノ扱いする実態を徹底して突きつけ、労働者派遣法を派遣労働者保護法に改正するよう迫りました。「ニーズがある」などと日雇い派遣を正当化していた首相を、「(非正規雇用は)中長期的には決して好ましくない」というところまで追いつめました。
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後期高齢者医療では、七十五歳という年齢だけで差別する世界に類のない実態、後期高齢者を狙いうちにした医療費削減という本質を告発。制度開始後に渦巻いた高齢者の怒りを早くから代弁しました。
いずれの質問も、普段はヤジで騒然とする議場がシーンと静まり返りました。与党席からも「その通り」「いい質問だ」の声が飛び交い、マスメディア記者は「地に足がついている。早くも今国会のハイライト」。テレビで見た国民からは「一筋の光が見えた」などの反響が相次ぎ、インターネットを通じて現在まで続いています。
福田首相は一月十八日の施政方針演説で、「いかに前向きに、夢を抱くことができる国になるか」「日本人は、目前に困難があろうとも、必ずや未来を切り開く」などと述べていました。しかし、そこにはなんら具体的打開策もなく、貧困にあえぐ国民の生活実態を前にどこまでもうつろに響くだけでした。
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党国会議員団は雇用や医療に加え、道路特定財源の一般財源化、地球温暖化対策、農業再生、税制問題、アメリカいいなり政治の打開など焦眉(しょうび)の課題で国民の願いを一歩でも二歩でも実現するために力を尽くしました。さらに、従来の政策の「手直し」に終始する福田内閣に対し、抜本的な政策転換を求める論戦を貫きました。
国民の利益貫く立場
今国会では、どんな時も正々堂々と論戦で政府を追いつめる日本共産党のゆるぎない立場もいかんなく発揮されました。その意義は、野党第一党の民主党と比較するとよりはっきりします。
野党四党が五月二十三日に参院に提出した後期高齢者医療制度廃止法案。今月六日に参院を通過し、いよいよ衆院で審議をおこなおうというその時、民主、社民、国民新の各党は首相問責決議案を参院に提出し、これが可決されたことで審議拒否の戦術に出たのです。
足場ない民主
政府提出の法案ならともかく、議員立法で自ら提出した法案の審議を放棄するなどまさに前代未聞の事態。日本共産党は、たとえ一党でも、衆院での趣旨説明と質疑をおこなう準備をしつつ、最後まで各党に審議入りを働きかけました。
これに比べ、民主党の小沢一郎代表は、問責を理由に十一日に開催が決まっていた党首討論までも放棄しました。党内からも「理解不能」の声が出るような、政党としての自殺行為にも等しい論戦軽視はどこからくるのか――。
それは、国政の基本的な問題で、論戦する足場をもたないからです。福田首相が「決断の時」(十七日)と表明し大問題になっている消費税増税問題にもはっきりと表れています。
消費税増でも
首相は施政方針演説で「消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る」と言明。これをうけた衆院代表質問で民主党は、消費税を社会保障目的税化して引き上げるという同党の「税制改革大綱」の立場を表明しました。
今後、政府・与党が消費税増税に向けた議論を本格化してくることは必至です。社会保障財源に、国民の暮らしを破壊する消費税を充てることに反対し、空前の利益をあげている大企業へのゆきすぎた減税をただし、五兆円にものぼる軍事費にメスを入れるべきだとする日本共産党の提起がますます重みを増しています。