2008年6月23日(月)「しんぶん赤旗」
国政の熱い問題からサミットまで
CS放送 志位委員長 大いに語る
日本共産党の志位和夫委員長は二十日放送されたCS放送「TBSニュースバード」の番組「国会トーク フロントライン」に出演し、キャスターの川戸惠子さんと対談しました。その要旨を紹介します。
旗印のない福田政権――国民の立場で「攻め」の論戦
川戸 国会閉幕ですが、どんな感想をお持ちですか。
志位 今度の国会にさいして、福田首相には何も旗印がないんですね。良かれあしかれ、自分で何をやりたいというものがない。
川戸 そういえば、そうですね。
志位 そういうなかで私たちは、国民の要求にたって「攻め」の論戦をやろうとのぞんだんです。派遣労働、後期高齢者、道路の問題、食料・農業問題など、太いところで大きな論陣をはって、それぞれかなり手ごたえがありました。
川戸 福田政権は防戦一方という感じはしました。そもそも(この間の)「ねじれ国会」をどうお考えですか。
志位 「ねじれ国会」というのは、これまでのように、与党が数の横暴で、議論もしないで、どんどん法律を通すことができなくなった。徹底的な論戦を通じてことの是非を明らかにしやすくなる条件があったと思うんですね。私たちはその(条件を生かす)立場で奮闘しました。
川戸 そうですね。共産党は審議拒否しないと決めていますからね。
志位 この点で与党はどういう対応だったかというと、「三分の二(の議席による衆院での再議決)先にありき」ということで、衆院の数の力でことを運ぼうとした。それから民主党も、参院の数の力を使って、審議拒否をやってみたり、強行採決をやってみたり、そういうことが目立ちました。本気になって議論を通じて政権を追い詰めていくという点に弱点があったと思うんですね。
川戸 そうですね。(双方で)同じようなことをやっている気がしましたね。
「対決」といっても根っこのところではつながっている
志位 最終盤に、民主党が参院で(首相)問責決議案を出すといいだしたときに、私たちは首相は問責に値するけれど、出すときはよほど効果があがるときでなければならない、いまは適切でないといったんです。
川戸 (決議案提出は)「えっ、今の時期に」と私たちも思いました。
志位 とくに問責決議可決のあと、民主党などが自分で出した後期高齢者医療制度の廃止法案について、自分で審議拒否するのは具合が悪い。国会の論戦に入る必要があるとよびかけました。
川戸 (共産党は、廃止法案の)趣旨説明だって、やらせろと自民党に申し入れられたそうですね。
志位 宇宙の軍事利用に道を開く宇宙基本法や、官と政の癒着を強める国家公務員基本法などの悪法を、自公民で合意したら、ろくな審議もなく通すという事態も目立ちました。一緒になって憲法を変える「議員同盟」の体制をつくったり。「対決」といっても名ばかりで、根っこのところではつながっている。この「ねじれ」はありますね。(笑い)
川戸 なるほど。そういう意味での「ねじれ」もあるんですね。
高齢者差別医療を許さない一貫した立場
川戸 後期高齢者医療制度では、共産党は以前から反対していました。民主党はいちばん最初、新しい制度は必要だということは、賛成していました。
志位 そうです。いちばん最初は、二〇〇〇年の十一月までさかのぼるんです。このときに、健保改定の法案が出て、私たちは法案自身にも反対したんですけれども、付帯決議の中に、高齢者は、独自の別建ての保険制度にするということ、それから診療報酬は包括払い、定額制にするということなどが明記されたんですね。これに共産党以外のすべての党が賛成してしまった。
お年寄りになれば病気にかかりやすくなりますし、治療にも一定のお金がかかってくるのは当たり前ですから、別建てにしたら必ずお年寄りに対する差別医療という問題が生まれてくる。私たちは、最初から「これは危ないぞ」とずっと言い続けてきたんです。ですから二〇〇六年に(後期高齢者医療制度をつくる)法案ができたときも、そういう立場から本格追及の論陣をはりました。「本質的な論戦を行ったのは共産党だけだった」と当時厚生労働大臣だった川崎二郎さんが言っています。
川戸 それが私たちのところに届いていなかったというのが大きな問題です。急に出てきて「えっ」という感じでしたから。
志位 (この制度は)お年寄りを別建てにするという大枠を続ける限り矛盾はどんどん広がっていきますから、いったん元に戻して、みんなが納得できる制度をつくるということに切り替えないといけないと思います。
「人件費」でなく「資材調達費」――この使い捨て労働は許せない
川戸 もう一つ共産党が前から言ってきたものに派遣労働の問題があります。実は『蟹工船』がブームだということで、私も買ってきてまた読んだんですけれども。ほかにも(インターネット上の動画サイトの)ユーチューブで派遣労働の問題での国会での質問が取り上げられて、それがすごいブームになっているという話も聞きました。この問題も今の人たちにあらためてズンときているんでしょうね。
志位 そうですね。戦後、派遣労働はもともと禁止されていたんですよ。戦前は、『蟹工船』にもでてくるけれども「周旋屋」がいた。
川戸 ありましたね。田舎の方から食べられない人たちをかき集めてという。
志位 そうそう。農民だとか労働者だとか食べられない人をかき集めて売り飛ばす。中間搾取、ピンはねが横行していた。それが戦後は禁止されたんです。
それをまた解禁したのが一九八六年の派遣法です。そして大転換が起こるのは一九九九年の(派遣労働の)原則自由化です。そして二〇〇四年に製造業への派遣を解禁した。若者の使い捨て労働という大問題を生み出してしまった規制緩和の罪は大きい。
川戸 ネットでも随分志位さんのところに書き込みがあるそうですけども、実感としていろいろなことがありましたか。
志位 ずいぶん派遣労働に携わっている方に話をうかがいましたけれども、一口で言えば、生きている人間をモノ同然に使い捨てる。たとえば派遣社員というのは企業の経理上も「人件費」として扱われないんです。「資材調達費」というところに計上されるんですよ。モノと一緒です。
川戸 そうなんですか。
志位 使い捨ての消耗品として扱われる。日雇い派遣では一日単位でそれがやられる。こういうことも聞きました。日雇い派遣だから、毎日働く場所が違う。きょうは倉庫で働く、明日はレジ打ち。そうやっていたらスキルアップする気持ちにもまったくなれないと。自分自身が労働を通じて少しでも豊かになりたいという希望もまったく失われてしまうという訴えもありました。この人間使い捨て労働は、規制を強化して、派遣労働者を保護していく法律への改正がどうしても必要です。
サミット――資本主義の危機対応能力が問われている
川戸 つぎにサミット。ちょっと前は環境サミットといわれていましたが、食料、エネルギー危機に対応するサミットになりそうですね。
志位 環境の問題では、日本の政権があまりにもだらしない。いま先進国で決めなければならないのは「京都議定書」の次の目標、(温室効果ガス削減の)二〇二〇年までの中期目標です。これを日本は出そうとしない。サミット主催国として、中期目標で(主催国に)ふさわしい働きをすべきです。
川戸 (首相の)福田さんが環境に関する発言をなされましたが、(中期目標は)入っていませんでした。
志位 二〇五〇年までの長期(目標)の方は出すんだけれども、二〇五〇年といったら半世紀先ですから(笑い)。(中期目標を)出さないとなると、日本のやる気が根本から疑われます。ただ同時にいわれたように食料とエネルギーも世界の一大問題になってきました。
川戸 そうですよね。
志位 サブプライムローン問題が破たんすると、投機マネーが証券市場からあふれでて世界中を徘徊(はいかい)し、一方では原油に、一方では穀物に流れ込む。ここで大もうけをあげようという動きがつくられ、価格を高騰させている。被害を受けているのは世界の庶民、発展途上国です。途上国での食料危機は深刻です。ここまでひどくなったわけだから、国際的な規制が必要になってきます。
川戸 サミットはオイルショックから世界を安定させなければならないということでつくられた。今回それができるのかというとちょっと無理じゃないかという気もします。
志位 そうですね。去年のサミットでドイツはヘッジファンドの直接規制を提起したけれども、日米が反対してつぶれました。ヘッジファンドの情報公開をやる、投機マネーには一定の課税もする、食料やエネルギーなど人類が生きていくうえでの基本になるものは投機の対象にできない仕掛けをつくるなどの規制がいります。国際的規制ができないとなると、資本主義は地球の管理能力がないということになってきます。
川戸 共産主義の方にいくのかもしれませんが(笑い)、いまほんとうにこれをどうしたらいいのか。
志位 最近よく「資本主義の限界」ということが言われます。私が言い出したことじゃなくて、たとえば財界のシンクタンクの方が、投機マネーの暴走について「どうしたらいいんでしょうか」と聞かれて、「これは資本主義の限界です」と。(笑い)
私たちの立場としては、まず資本主義の枠内でも最大限の努力をやる。貧困、投機、環境などの問題で、民主的ルールをつくっていく。その努力を最大限やっていく必要がありますが、これらの問題は資本主義の枠内で根本的に解決できるか。二十一世紀は地球的規模で資本主義の是非が問われる世紀になると考えています。
川戸 出番ですか。
志位 大きな意味で私たちの出番だと思っています。