2008年6月29日(日)「しんぶん赤旗」

岩手・宮城地震

広域合併 足かせ

「市から情報ない」

職員激減、不安の住民


 発生から二週間を迎えた岩手・宮城内陸地震。地震で大きな被害がでたのは過疎化のすすむ中山間地です。同時に「平成の大合併」で自治体が広域合併し、旧町村の役場では地元の職員などが大きく減った中での震災でした。(阿曽隆)


10町村合併の栗原市 宮城

表

 宮城県栗原市。三年前の二〇〇五年四月に十町村が合併して新市となりました。人口約八万人。面積は宮城県でトップとなり、東京二十三区の合計よりも広い。旧花山村や旧栗駒町など、秋田、岩手両県境に接する市の周辺部で地滑りや、がけ崩れなど大きな被害がでました。

 旧栗駒町の栗原沖地域でラッキョウやモロヘイヤの収穫に追われていた農家の男性は「震災後、市からは何の知らせもありません。合併で町役場は総合支所になり、地域をよく知ったベテラン職員が本庁に異動しました。人も減って手が回らないのでしょう」と指摘します。

 男性の家は壁や土台に被害をうけました。なかでも風呂場はめちゃくちゃに壊れましたが、農作業が忙しく、いまもそのままです。「前の地震(〇三年、M7・1)の時は、その日のうちに役場の職員が来て相談にのってくれたのですが、どうしたらいいのか分かりません」とあきらめ顔でいいました。

 栗原市の現在の職員数は七百九十六人。合併で全体の60%にあたる四百八十三人が旧築館町などにある本庁機構に集中し、旧町村の総合支所十カ所の職員は合計で三百十三人へと減少しました。旧町村の職員減少率は57―68%にのぼります。旧栗駒町の職員も百三十人から四十三人へと減少しています。

 こうした中、被災者が生活再建支援をうける基準となる罹災(りさい)証明の発行や被災調査は遅れています。

 栗原市では、二十五日現在で住家被害は全壊四棟、半壊二棟としています。しかし応急危険度判定で赤紙が張られ、住み続けることが「危険」と判定された家屋は二百十六。自宅の柱が折れ、壁も落ちる大きな被害をうけ「赤紙」が張られた男性は、「住めないような被害なのに、全壊ではないのか。支所に聞いても本庁に聞かないと分からないとの返事。仮設住宅を申し込んでいるがどうなるのか不安だ」と戸惑いの声をあげています。 一方、地元をよく知る職員の存在が、住民に安心感を与えた例もあります。

 同じ栗駒地区の文字地域。荒砥沢ダム上流のわき水を利用していた同地域二百七十世帯は、震災で水が止まりました。道路が寸断され水源がどうなっているのか分かりません。住民が不安を強める中、住民とともに地元出身の市職員が山に分け入り水源の状態を確認することができました。

 同地域の男性(65)は「何でも本庁にお伺いをたてるような対応では、災害直後の住民の不安にこたえられません。現場に近い総合支所の機能をもっと強めてほしい」と話しています。

 日本共産党の三塚保夫栗原市議団長は「住民の安全と命を守るのが自治体の役割。総合支所の機能はきちんと確保していかなければならない。山間部の被災者が住宅や生活を再建し、古里に戻れるよう、国や県・市に支援を求めていきたい」と話しています。


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