2008年6月30日(月)「しんぶん赤旗」
主張
グッドウィル廃業
派遣法の抜本的な改正は急務
違法派遣や日雇い派遣事業で大きな批判をあびてきた派遣業界大手のグッドウィルが、全事業の廃止を発表しました。
同社の廃業は厚生労働省が派遣業の許可を取り消す方針を示していることを受けたものです。違法を繰りかえす企業の社会的制裁は当然ですが、この機会に、違法行為がまん延する労働者派遣の実態そのものにメスを入れることが求められます。
安上がりな労働のため
グ社は、現行派遣法でも禁止されている港湾運送や建設業務への派遣、労災隠しなど、数かずの違法行為を繰り返してきました。これまでも法令違反やトラブルが労働者から指摘されていました。今年一月には港湾運送などへの違法派遣で全事業所を対象に事業停止命令を受け、この二十四日には東京地検が同社課長ら三人と法人としてのグ社を、二重派遣を禁じた職業安定法違反幇助(ほうじょ)などでも略式起訴しました。現行法さえ守ろうとせず違法行為を繰りかえしてきた責任を厳しく問われるのは免れません。
問題なのはグ社にとどまらず、派遣業界には二重派遣や禁止業種への派遣などが常態化し、大きな社会問題になってきたことです。
派遣企業は、労働者をきちんとした教育もしないまま、危険で過酷な労働現場に違法を承知で送り込んできました。さまざまな名目でピンハネしたり、労働災害を自己責任にさせたり、労働保険・社会保険未加入など法令違反が後を絶ちません。
背景にあるのは派遣業法による派遣事業の導入と、その改悪です。
派遣法は自由に安く使い、いつでも解雇できる使い捨て労働を確保したいという財界の雇用戦略を背景に導入されました。相次いで改悪され、一九九九年の派遣業種の原則自由化以降は労働者派遣が各業種に広がり、正社員との置き換えがすすみました。二〇〇三年には製造業まで拡大され、派遣労働者は三百二十万人を超え、日雇いなど登録型派遣が七割を占める異常な事態です。派遣法が抜本改正されない限り、グ社が廃業に追い込まれても、派遣先で過酷な労働を強いられる派遣労働の実態は改善しません。
政府も日雇い派遣を禁止する法改正を言いだしています。労働者が派遣会社に登録し、仕事があるときだけ派遣会社から連絡がくるという不安定で身分の保障もない日雇い派遣を直ちに禁止するのはもちろん、派遣は常用型を基本とし、登録型派遣は対象業務を通訳やソフトウエア開発など専門業務に限ることです。
日本共産党は人間を使い捨てにする派遣労働の問題を早くから重視し、派遣法の導入と改悪に一貫して反対し、派遣法の労働者保護法への抜本改正を強く迫ってきました。部分的な手直しでなく、派遣で働く労働者を守る方向で派遣法の抜本改正の実現がいまこそ求められます。
派遣先にも雇用責任を
同時に、グ社の廃業で問題になる派遣労働者や同社社員への雇用対策は急務です。同社の登録型労働者は約三百万人で、五月の一カ月間に働いた派遣労働者数は二万五千人に及びます。従業員も四千三百人を超えます。廃業によって、明日の収入の道が絶たれるこうした労働者が路頭に迷うことがないよう万全の対策が求められています。
グ社と同グループが雇用責任を果たすとともに、政府も派遣先による直接雇用や業界全体による雇用が保障されるよう、真剣な対策を講じていくことが重要です。
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