2008年7月2日(水)「しんぶん赤旗」
無制限な教育介入に道
石井副委員長 教育基本計画で談話
日本共産党の石井郁子副委員長は一日、「教育振興基本計画」の閣議決定について、談話を発表しました。
本日、政府は「教育振興基本計画」を閣議決定しました。これは、「今後十年間を通じて目指すべき教育の姿」を示したうえで、二〇〇八年度から二〇一二年度までに政府がとりくむ教育施策を定めたものであり、その大もとには一昨年に制定された改悪教育基本法があります。
日本共産党はそもそも、教育基本法改悪によって制度化された「教育振興基本計画」について、国が一方的にこのような「計画」を策定することは、政府による教育内容への無制限な介入・支配に道をひらくものとして厳しく批判してきました。今回の「計画」は、私たちが指摘したとおりのものと言わなければなりません。
すなわち、「計画」は、改悪教育基本法にそった人づくりのために新学習指導要領など国の施策の忠実な実施を求め、そのために、全国学力テストなど国の物差しで実施状況をチェックし、改善を命じるという手法を、教育に全面的に取り入れようというものです。教育の自主性を侵し、子どもたちの柔らかい心を国の定める鋳型に押し込めるこのような計画は、撤回すべきです。
しかも、「計画」は多くの国民や教育関係者らが一致して要求し、文科省すら言わざるをえなくなった、教育予算水準のOECD(経済協力開発機構)諸国平均並みへの引き上げや教職員の増員を見送り、「コスト縮減」をかかげました。これは「教職員一万人削減計画」など政府の教育予算削減の計画をすすめるものです。
憲法の原則にたてば、政府の教育に関する施策は、何よりも政府が責任を負わなければならない教育条件の整備を中心にすえるべきであり、教育の内容や方法を押し付ける計画は許されません。
解説
予算充実目標 次々削る
当初は二〇〇七年度中に策定される予定だった教育振興基本計画は、一日まで大幅にずれ込みました。最終盤になって教育予算増や教員増の数値目標を盛り込めるかどうかが、政府内でも大きな議論になったからです。
結局、歳出削減を主張して譲らない財務省に文部科学省が“屈服”し、数値目標を取り下げての決着となりました。
日本の教育予算は対GDP(国内総生産)費で3・5%。先進国の中で最低水準です。文科省はこれを、今後十年でOECD(経済協力開発機構)諸国平均の5%まで引き上げる数値目標を、計画に盛り込むことを主張していました。教職員を二万五千人増やすことも掲げていました。
いずれも教育現場が抱える困難の打開を求める世論を反映した要求でしたが、財務省は真っ向から反対。五月中旬には「日本は少子化が進んでおり、教育投資の比率が低いのは当然」などとする“反論文書”まで作成し、押さえ込みを図りました。
決定された計画では、文科省提案の数値目標の明記が見送られたばかりか、「現在の国の財政状況は大変厳しい状況にあり、これまでの歳出改革等の改革努力を継続する必要がある」「施策の選択と集中的実施を行うとともに、コスト縮減に取り組み、効果的な施策の実施を図る」などの文言が“ダメ押し”的に書き加えられました。
この顛末(てんまつ)は、自民・公明の政権がいかに教育や福祉など国民の暮らしに軸足を置いていないかを改めて鮮明に示しました。
教育条件充実の根拠となる数値目標は削られた一方で、全国学力・体力テストの実施や道徳教材への国庫補助制度の検討など、教育内容・方法にかかわる目標は明確に盛り込まれました。
日本共産党が主張してきたように、教育振興基本計画の策定には、政府による教育への無制限な介入・支配に道を開く恐れがあることがはっきりしました。
政府による教育統制の強まりを許さない世論と運動を広げることが求められています。(坂井希)
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