2008年7月2日(水)「しんぶん赤旗」

キヤノン調査について

志位委員長の記者会見(要旨)


 志位委員長が六月三十日、キヤノン長浜工場の視察後、滋賀県庁内でおこなった記者会見の要旨は次の通りです。


写真

(写真)記者会見する志位和夫委員長=6月30日、滋賀県庁

 昨日(二十九日)滋賀県入りし、長浜キヤノンで働いている非正規社員の方々から実態を聞きました。それも踏まえて、今日(三十日)長浜工場の視察をおこない、キヤノン経営陣の方々から説明を受けました。キヤノン側で応対したのは、キヤノン本社の諸江昭彦専務取締役、藤井康弘人事本部要員構造改革推進室長、森謙二長浜キヤノン株式会社社長ら五名でした。

 その後、滋賀労働局を訪ね、小林健局長らから労働局としての取り組みを聞きました。

キヤノンを訪ねてあきらかになった4つの問題

 キヤノン経営陣との質疑であきらかになった大事なポイントは四つです。

偽装請負問題――「大いなる反省をしている」

 一つは、キヤノンがおこなってきた数々の違法行為をどう受け止め、どう対応しているかということです。

 この点では、キヤノンから、偽装請負にかかわって、長浜工場も含め労働局から八件の行政指導を受けたことが、資料とともに明らかにされました(表)。この事実が、キヤノン側から公式に公表されたのは今回が初めてです。

 諸江専務からは「大いなる反省をしている」との発言があり、「要員管理が事業本部ごとにおこなわれていたため、本社が実態を把握していなかった、現場まかせの改善を図りつつある」との説明がありました。「この問題は相当こりています」という発言もありました。

 私が予算委員会でとりあげた派遣労働者の社会保険未加入問題については、「一部の派遣社員のなかで未加入があることが判明したので、派遣会社に保険加入を証明する書類の提示を要請し、確認を終了した」という説明がありました(図)。これは、前日の派遣労働者からの聞き取りでも、解決が確認できました。

 偽装請負でも、社会保険未加入の問題でも、キヤノンとして一定の対応をしてきたことがあきらかになりました。

表
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図

製造派遣の解消――「(労働力を)派遣に期待することはできない」

 二点目は、キヤノンの製造現場での派遣解消の取り組みについてです。

 私がこの問題をただしたのにたいして、諸江専務からは「キヤノンでの製造派遣は、今年中に解消する方向で対応している」との言明がありました。年内に一万二千人の派遣社員のうち六千人を期間社員に、六千人分を請負にと報じられている点については、期間社員の六千人は少なく見た数字で、実際にはそれを上回るだろう、いずれにせよ製造派遣は年内に解消するという説明でした。

 キヤノンから提出された資料(グラフ)によると、〇七年三月末では国内キヤノングループ全体で、正社員などの直接雇用が52%で、半分は派遣や請負という不安定雇用でした。長浜工場では39%で、六割以上が派遣や請負で成り立っていました。私は国会で「派遣工場ではないか」とただしましたが、その実態が間違いない事実だったことも確認できました。

 それが〇八年六月末では、全国的に製造派遣をかなり減らし、長浜では製造派遣はゼロにまで減っています。製造派遣を解消する方向で取り組みがすすんでいることが、数字であきらかになりました。

 これまで拡大してきた派遣を解消する方向に転換した理由を聞くと、〇九年に三年の期間制限が到来することとあわせて、安定した労働力の確保や技術の継承という面から「派遣労働者を企業の基幹的要員として期待することはできない」という回答でした。つまり派遣労働頼みでは企業もやっていけなくなるということだと思います。

 派遣労働はもっとも不安定な間接雇用ですから、労働者のたたかいと国会の論戦で、日本の製造業のトップメーカーが派遣解消という方向で動きだしたことは、重要な前進の一歩だと考えます。

グラフ

期間社員――新しい形の使い捨て労働

 三つ目は、派遣社員から期間社員になった労働者の労働条件の問題です。

 私から、期間社員の雇用契約期間を「最初は五カ月、その後六カ月ごとに更新され、最長二年十一カ月」としている理由をただしました。諸江専務からは「二年十一カ月を超えて契約更新すると、期間の定めのない正社員になると期待される。そういう期待を持たせてはならないからだ」という答えが返ってきました。「二年十一カ月で辞めてもらうということか」と重ねて問うと、「辞めてもらう」と答えました。

 これまで派遣労働者だった方からは、「二年十一カ月では不安で期間工を選べない」という声がたくさん寄せられました。二年十一カ月で辞めさせる期間社員という新しい形での使い捨て労働を許していいのか、という大問題が浮かび上がっています。

 キヤノン側は「正社員の登用制度がある」とさかんに言いましたが、正社員に登用する計画の規模をただしたところ、「そのときにならないと分からない」が答えでした。正社員への登用の道はあると言っても、規模も定かでないのです。

 質疑のなかでは、キヤノン側から「生産変動にともなう要員調整で二年十一カ月にいたる前に辞めてもらうことも原理的にはありうる」という発言もありましたが、「よほどのことがない限り、二年十一カ月は継続する」との言明もありました。

 また、期間社員がすべて時給制になっていることについて、「時給だと、盆、暮れ、ゴールデンウイークなどの長期休暇があると手取りが数万円単位で下がる。これが一番つらい」という労働者の声も紹介して、「なぜ時給にするのか」とただしました。定かな答えはありませんでしたが、諸江専務は「長期休暇(の対応)については考え方を整理する」とのべ、検討を約束しました。

業務請負――「(適正な請負は)なかなか難しい」

 最後に請負の問題です。派遣を解消して、その一部を業務請負に切り替えるといいますが、はたして「適正な請負」ができるのかという問題です。キヤノンは八回にわたって偽装請負で摘発されてきたわけですが、キヤノン側は「大臣告示三七号に従って適正化に努力している」とのべました。そこで「同一工場内の一角に請負が入って仕事をする構内請負で偽装請負が本当になくせますか」と尋ねたところ、諸江専務は「現実にはなかなか難しい」、「本来は作業場所は別の方がいい」と答えました。業務請負を増やすというが、偽装請負を根絶できる保証はないというのが実態だと思います。

正社員化という太い道を切り開くたたかいを

 私たちは、偽装請負や派遣労働者の問題に一貫して取り組んできましたが、労働者のたたかいや国会での論戦で、前向きの変化が生まれてきていると思います。製造業で派遣解消の動きがでてきたことは一歩前進です。しかし、それに代わってでてきた期間社員は、二年十一カ月でクビを切られる。業務請負は、偽装請負の危険がまぬがれない。ともにゆきづまりです。まともな道にすすもうと思えば、やはり正社員化という太い道を切り開くしかありません。その方向でたたかいを前進させる必要がありますし、そのために力を尽くしたいと思います。

労働局との懇談であきらかになったこと

 最後に、滋賀労働局との懇談です。ここでは二つの点が確認できました。

「本省の指示で長浜キヤノンを調査」

 一つは、長浜キヤノンについてです。二月八日の私の質問後、本省(厚生労働省)から指示があり、質問で提起された問題について同社の調査を実施している、調査はまだ続いているということでした。違法行為があれば当然、是正措置をとっていくという説明もありました。

派遣労働者を守る指導官の増員を

 もう一点は、労働局の体制の問題です。派遣事業を指導する仕事にあたる需給調整指導官が、滋賀労働局に二人しかいないということでした。滋賀県の県内GDP(国内総生産)に占める製造業の比率は全国一、製造業従事者に占める派遣・請負労働者の比率も高く、全国平均の約二倍です。その滋賀県で指導官がたった二人では、とても無法を取り締まることができません。派遣労働者も急増しているわけですから、抜本的増員が必要だということを政府に求めていきたいと思います。



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