2008年7月2日(水)「しんぶん赤旗」
「搾取」という言葉は古いのでは?
〈問い〉 「搾取」という言葉を使うと「古くさい」と言われました。搾取はもう古いのでしょうか?(神奈川・一読者)
〈答え〉 いま、若者のあいだで戦前のプロレタリア文学『蟹工船』(小林多喜二著)が読まれたり、「資本主義の限界」がテレビで大きく取り上げられ、志位委員長が出演して、マルクスが『資本論』で何を明らかにしたかを語って注目を集めたりしており、「搾取」は古くさくなるどころか、ますます重要になってきています。
『蟹工船』ブームの背景には、パート・アルバイト、派遣など、安い賃金と不安定な雇用のもとで働かざるをえない人たちが、若者を中心に増えていることがあります。
そうした若者たちが、北洋の蟹加工船で、非人間的な扱いをうけた労働者たちが団結してストライキに立ち上がる姿を読み、「自分たちの境遇を描いているようだ」「ともかく声を上げていかなければいけないと励まされた」と受け止めているのです。
またいま、サブプライムローン(低所得者向け住宅融資)の破たんから始まった経済・金融の混乱は、アメリカだけでなく世界的な大問題になっています。さらに、国際的な投機マネーが次のもうけの場として原油市場や穀物市場に流れ込んだため、石油や食糧品が急騰し、発展途上国の一部では食料暴動まで起きるなど、その影響は深刻です。
こうした「貧困と格差」の広がりや、投機マネーによる経済の混乱の大もとには、もうけのためにはなりふり構わない資本主義の「利潤第一主義」があります。日本の財界・大企業は、この間、労働者の賃金を抑える一方で、もうけを二倍以上に増やしています。
マルクスは、資本主義の利潤の大もとが労働者からの剰余労働の搾取にあること、その剰余労働による富をさらにたくさん手に入れようと「利潤第一主義」に突き進むところに、資本主義の「目的」「動機」があることを明らかにしました。
ですから、搾取は古くなるどころか、現代の世界と日本の経済や社会の動きをとらえる上で、もっとも基本的な、欠かすことのできない考え、見方になっているといえます。(学)
〔2008・7・2(水)〕