2008年7月5日(土)「しんぶん赤旗」
労働者の自殺2万4000人
「実態白書」 愛知・豊田が最多
04−06年
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被雇用者の自殺は、愛知県豊田市など大企業が立地する工業地域で多発していることが、四日発表された初の「自殺実態白書2008」で分かりました。
白書は、経済学者や医師、NPO(民間非営利団体)法人などで構成する自殺実態解析プロジェクトチーム(リーダー=清水康之NPO法人ライフリンク代表)が作成しました。これまで公表されなかった、自殺発生地を所轄する警察署別の自殺者のデータなどを盛り込んでいます。
二〇〇四―〇六年に自殺した人のうち、被雇用者は二万四千二百八人。これを警察署別に見ると、自殺者数の多い順に(1)愛知・豊田(九十三人)(2)山梨・富士吉田(八十五人)(3)福岡・筑紫野(八十三人)(4)北海道・苫小牧(八十二人)(5)北海道・札幌北(七十九人)―などとなっていました。
白書は、被雇用者の自殺が多い上位五十署には、中心企業→下請け企業→孫請け企業の「ピラミッド型の構造」の中に、さまざまな雇用形態の労働者が存在している地域が多いことを指摘。自殺の要因として(1)長時間労働(2)二十四時間交代制勤務(3)人員整理(4)派遣社員の不安定な地位―などが推測されると分析しています。
無職者の自殺者は五万四千三十四人で、一位は福岡・早良の百八十七人。自営業者の自殺者は一万一千六十五人で、一位は同じく福岡・早良の四十九人でした。
自殺の原因・動機では、(1)経済・生活問題(九千六百四十四人)(2)病苦など(八千九百五十七人)―が上位にあがっています。
記者会見した清水氏は、「二年前に自殺対策基本法ができたが、自治体などには『何をすればいいのか』とのとまどいもある。どの地域で、どういう人たちが自殺しているといった傾向が分かれば、より有効な対策が打てると考えた」と、白書の意義を強調しました。
政府に「白書」提出
小池議員も同席
「自殺実態白書2008」の発表にあわせ、自殺実態解析プロジェクトチームの清水康之代表と澤田康幸東大大学院准教授(経済学)が四日、岸田文雄内閣府特命担当相に白書を提出しました。超党派の「自殺防止対策を考える議員有志の会」の尾辻秀久会長らも同行。日本共産党の小池晃参院議員は、議連の一員として同席しました。
岸田担当相は「このような白書は意味がある。対策に生かせるよう努力したい」と述べました。小池氏は「本来このようなものは行政がまとめるべきものではないか。被雇用者の自殺者数では愛知県豊田市が一位など、地域ごとの特性・背景が見えてくる。複雑な要素があるだろうが、長時間労働や成果主義などが背景にある点は、しっかり見なければいけないのではないか。これを生かし、できることを着実に実施してほしい」と要請しました。
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