2008年7月9日(水)「しんぶん赤旗」
オゾンホール その後どうなったの?
〈問い〉夏の日差しが強くなって、紫外線が心配です。最近、オゾンホールのことがあまり騒がれないようですが、どうなっているのですか? また、紫外線は以前にくらべ強くなってきているのですか?(茨城・一読者)
〈答え〉オゾンホールは上空の大気中(オゾン層)に含まれるオゾンの量が極端に減少し、オゾン層に穴があいたようになる現象です。南極上空にオゾンホールが出現するのは、8月から12月にかけてで、最も大きくなるのは9月ごろです。
昨年、最大になったときの面積は、過去最大を記録した2000年以降では、02年、04年についで、3番目に小さい規模でした。しかし、06年には過去2番目の大きさを記録しています。
南極のオゾンホールは、1980年代から90年代半ばにかけて急激に拡大しました。90年代末以降、増大のしかたはゆるやかになっていますが、長期的には過去最大レベルの状況が続いています。
オゾン層が人工化学物質のフロンガスで破壊される可能性が科学者によって初めて指摘されたのは1974年です。80年代に南極上空のオゾンホールが確認され、85年にオゾン層保護のための「ウィーン条約」が締結されました。これにもとづいて具体的なフロン削減目標を定めた「モントリオール議定書」が成立したのが87年です。その後、オゾン層破壊が予想外の速さで進んでいることが明らかになって、規制スケジュールの前倒しや規制対象物質の追加が行われてきました。
オゾンが減少しているのは南極上空だけではありません。地球全体をとりまくオゾン量は80年代から90年代にかけて大きく減少し、現在も少ない状態が続いています。大気中のオゾンが減少すると、地表へ降り注ぐ有害な紫外線の量が増加します。気象庁が札幌、つくば(茨城県)、那覇の3地点で行っている観測によると、90年以降、紫外線が増加する傾向が続いています。
フロン規制は、地球環境を守るために人工化学物質の生産・使用を世界レベルで規制する初めての例となりました。その成果は徐々に現れているといえますが、一度破壊された地球環境を元にもどすことがいかに困難であるかも示しています。
フロンガスによるオゾン層破壊が指摘された74年からモントリオール議定書が成立する前年の86年までの間に、日本企業はフロンの生産を3倍化させた「実績」があります。企業の自主性にまかせるやり方では、地球環境を守ることが難しいことを示しています。(利)
〔2008・7・9(水)〕