2008年7月16日(水)「しんぶん赤旗」
主張
米・イラク協定交渉
米軍撤退こそが解決のカギ
米ブッシュ政権がイラクに押し付けようとしてきた駐留米軍の地位協定の締結交渉が、イラク国民の猛反発で行き詰まっています。協定はイラクに新たな難題を持ち込むものだからです。
協定は、イラク戦争の出口が見えない中で米軍が今後も長期に作戦を継続できるようにするもので、永続的な駐留につながります。イラクではブッシュ政権が頼りとするマリキ首相さえ米軍の撤退時期を明示するよう求めるに至り、事実上すべての政治勢力が撤退を迫っています。
永続的な占領継続
地位協定は、米軍駐留の根拠とされる国連安保理決議が今年末に期限切れになるのを前に、それに替わるものとして米側がイラクに迫っています。米軍にイラク人の拘束も含む作戦行動の自由を保障し、五十八カ所もの基地提供や制空権などを付与するものです。
「主権国家間」の合意という米政権のうたい文句とは裏腹に、協定はイラクを今後も占領状態に置くとともに他国への米軍の出撃基地にも変えるものです。
イラク議会の多数派に属する三十一議員が六月に連名で米議会に送った書簡は、「米占領軍にイラクからの全面撤退を義務付ける明確な仕組みのない」いかなる米国との協定も「強く拒否する」と表明しています。基地や兵士をあますところなく撤退させる時期を明確に示せと主張しています。
イラク国民の反発を背にしたマリキ政権との交渉で米側は譲歩を迫られ、民間軍事会社の雇い兵へのイラクによる訴追免除の要求をあきらめるなどの対応を示してきました。しかし、米側は撤退時期を示すことを固く拒否しており、協定はイラク側が求める主権回復に逆行しています。
米側に衝撃だったのが、米国の意向に従うとみられたマリキ首相の動きです。同首相は七日、協定づくりには米軍の撤退時期を示すことが必要だとの立場を初めて表明しました。二〇〇九年にイラク議会の選挙が予定されていることも理由の一つとみられています。マリキ首相は、長期的な地位協定を結ぶのは困難であり、当面の事態に対処する覚書を交わすよう米側に提案しました。
交渉経過は明らかでないものの、七月末までに協定を締結するとした米側の当初の計画は後退せざるをえず、合意は国連決議期限切れをにらんだ「つなぎ」的なものとなり、イラクとの関係の交渉は次期米政権に委ねられるとの観測が強まっています。
この経過が示すのは、侵略軍である米軍の即時撤退こそイラクが抱える問題を解決する条件だということです。
自衛隊も撤退を
連名の書簡を携えて訪米したイラク議員は、外国軍が駐留するという「銃を突きつけられた」状況下では協定など結べないと述べ、イラクが必要とする国民和解にとって米軍の存在こそが「障害」だと強調しました。
イラクに航空自衛隊を派遣している日本政府も、米国の求めに応じて派遣を継続するため、自衛隊の地位協定をイラクとの間で模索しています。イラク国民にとっては自衛隊の派遣継続も障害です。米国の政策に追随する姿勢をきっぱりとやめ、自衛隊はただちに撤退させるべきです。
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