2008年7月17日(木)「しんぶん赤旗」
国際農民組織ビア・カンペシーナとは?
〈問い〉 国際農民組織ビア・カンペシーナとは、どんな組織なのですか?(宮城・一読者)
〈答え〉 ビア・カンペシーナ(Via Campesina)とは、スペイン語で「農民の道」の意味です。農産物貿易の自由化が世界の農民に困難を広げるなか、1993年5月、各国の農民運動の組織がベルギーのモンスに集まって発足させました。
規約では、「小作農、中小農民、先住民社会の小工芸品製作者、農業労働者の基本的な利益をまもり、それらの人々の運動と組織を調整する国際運動体」「いかなる政治や経済にも依存せず、干渉も受けない自主性と多様性を貫く運動」と定義づけ、4年に一回の国際大会、国際調整委員会、地域、国際委員会、国際事務局、加盟組織で構成される、としています。
加盟組織はアジア、アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカの70カ国に広がり、国際事務局はインドネシアに置かれています。国際委員会の責任者は現在、インドネシア農民組合の代表ヘンリー・サラギ氏が務めています。
ビア・カンペシーナは小規模農民を脅かす新自由主義的なグローバル化に立ち向かい、世界の諸NGO組織と共同しながら国際的な行動、提言を行ってきました。96年の世界食料サミットに際しては、農産物の貿易自由化路線に対置して「食料主権」という考え方を初めて提起。それは、その後、世界の農民・市民組織の共同要求として定着・発展し、04年には、国連人権委員会でも、飢餓を克服し、持続可能な人類社会に不可欠と確認されています。
最近では、「小規模で持続可能な農業は地球を冷やす」というスローガンのもとに地球温暖化対策でも積極的に行動し、今回の洞爺湖サミットに向けて見解を発表しています。この取り組みが評価され、国際代表のヘンリー・サラギ氏が、昨年、イギリスの有力紙ガーディアンから「地球を救う50人」の一人に選ばれています。
日本の農民連は、99年のシアトルでのWTO行動をきっかけにビア・カンペシーナとの交流が始まり、その後、相互の交流、共同行動を積み重ねて、05年に正式に加入しました。加入後、農民連は東南・東アジア組織の一員として、韓国やフィリピン、タイ、ベトナム、インドネシアなどの農民組織との交流を毎年のように行っています。
「食料主権」を主張し、「希望をグローバル化するためにたたかいをグローバル化しよう」というビア・カンペシーナの呼びかけは、世界と日本の農民の運動を励ましています。(橋)
〔2008・7・17(木)〕