2008年7月19日(土)「しんぶん赤旗」
UR団地の取り壊しは、財界の要求なの?
〈問い〉 UR団地の取り壊し計画に驚いています。これは、財界、不動産業界の要求なのですか?(東京・一読者)
〈答え〉 独立行政法人「都市再生機構」は昨年12月26日、現在77万戸ある賃貸住宅ストックのうち、当面10年間で8万戸を削減することなどを内容とした「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を発表しました。
もともとこの計画は、「官から民へ」という小泉「構造改革」路線の一環で、安倍・福田内閣が継承している財界主導の「規制改革・民間開放推進会議」が提唱してきたものです。
同推進会議で、ある委員は「おたくの住宅(機構住宅のことを指す)は福祉でやっているわけではないですね。あくまでもマーケットを補完するという役割はあるかもしれないけれど」「(家賃が)安いということはやはり民業を圧迫していることになりますよ」と居並ぶ国土交通省、機構の幹部職員を脅迫するかのような言辞を弄(ろう)しています。
さらに「民間での供給がこれだけリッチになっているのに、なお機構さんが自らお建替えにならなければならない理由はどこにあるのですか」とただし、同会議の議長、草刈隆郎・日本郵船株式会社代表取締会長は「要するに賃貸住宅とか全然減っていないですね」「建替え、建替えと言うけれども、建替える義務はないんですよ。それをどうして民間にどんどん払い下げてやらないのか」とダメ押しともとられる発言をしています。
どうして財界・大企業がこのような発言をするのか。それは総資産12兆円の資産に目をつけているからです。なかでも大都市の中心部にあるUR賃貸住宅とその敷地は、超高層マンションや事務所ビル、大規模商業施設などの建設適地であり、財界・不動産業界にとって“垂涎(すいぜん)の的”なのです。しかし、日々生活している居住者の居住権を公然と奪うことはできません。そこで政府を動かし、今回の「再編方針」を具体化しようとしているのです。
しかし「再編方針」には矛盾もでています。冬柴国土交通大臣は「追い出しはしない」と国会で再三答弁しています。最近、若者にも高齢者にも居住をめぐる不安が増大し、政府・与党もUR賃貸住宅の「セーフティーネット(安全網)」としての役割を認めざるを得ないのです。
さきにおこなわれた全国公団自治協の定期総会で、「公団住宅の『再編方針』による売却・削減計画に反対する」特別決議を採択しました。居住権を無視した財界いいなりの無謀な「再編計画」は、破たんすることは明らかです。(高)
〔2008・7・19(土)〕