2008年7月22日(火)「しんぶん赤旗」
療養病床11.5万削減
12年度末 国指示で都道府県計画
大量の医療・介護難民発生も
共産党、撤回を要求
本紙調査
長期療養が必要な高齢者が入院する療養病床が、二〇一二年度末には現在より十一・五万床も削減される計画になっていることが、本紙の調査でわかりました。国の指示で都道府県が定めた削減目標を集計したものです。政府が目標としている削減数(約二十三万床)は下回っているものの、計画が進めば、多くの医療・介護難民が生まれるおそれがあります。
政府・与党は、〇六年の医療改悪で、全国に三十八万床ある療養病床を十五万床まで減らす計画を打ち出しました(介護型十三万床を全廃、医療型二十五万床を十五万床に削減)。これに基づいて、都道府県は「医療費適正化計画」を作成し、療養病床の削減目標を掲げました。
計画策定中の新潟、奈良、佐賀の三県を除く四十四都道府県(案を含む)が残す予定の療養病床数の合計は、一二年度末で二十一万五千八百八十一床です。現状(四十四都道府県の合計で三十三万一千五十四床)より、約十一万五千床減ることになります。
そうしたなかでも、東京都のように、今後、急速に高齢化が進むことなどから、現状よりも病床数を増やす計画を策定したところもあります。北海道は「短期間での療養病床数の大幅な削減は、患者や家族の方々に不安を与える」として、現在の医療型の療養病床数を確保するとしています。
その結果、政府の削減目標数を約十一万床下回りました。画一的な削減目標が、現場では通用しないことを示しています。
日本共産党は、療養病床の大幅な削減は行き場のない患者を大量に生み出すとして、撤回を求めています。
解説
療養病床の削減
数値先にありきの“空論”
療養病床の削減は、後期高齢者医療制度の実施とならぶ、二〇〇六年の医療改悪法の柱でした。病院のベッド数を減らすことにより医療費を抑制することを狙ったもので、政府は年四千億円の医療費削減を見込んでいました。
これに対して現場からは、「介護施設や在宅介護などが足りず、多くの介護難民・医療難民を生むことになる」という批判が噴出。撤回を求める声が広がりました。
今回の本紙の聞き取り調査でも、都道府県の担当者から「受け皿となる介護施設が少なく、厚生労働省の指示通りに減らすと、病院にも介護施設にも入れない患者が出かねない」との声が出されました。
削減計画が、数値目標先にありきの“机上の空論”であったことは、当時の厚労省の担当者が明らかにしています。医療改悪法を実質的につくった同省保険局に、財務省から出向していた村上正泰氏です。
同局総務課課長補佐として事情を知り尽くしている村上氏は「今から振り返れば、私自身、『本当に一五万床で大丈夫なのだろうか』と心配になる」と告白。社会保障費削減が政策の至上命令となる中で、「患者の受け皿が整備できるのか不確かなまますべてが突然決まったという格好になってしまった」と証言しています(『中央公論』三月号)。
政府は〇六年度の診療報酬改定で、療養病床に入院する患者のうち「医療の必要度が低い」と判定された人の入院費に対する報酬を減額し、病院経営の面から病床削減をねらいました。その結果、すでに退院を迫られる患者が相次いでいます。〇八年度の改定では、報酬点数をさらに引き下げ、いっそう事態を悪化させています。
厚労省は今後、各都道府県の算定方法などをチェックし、計画が過大だと判断したところには、さらに削減を求める方針です。高齢者を病院から追い出す非情な削減計画は、きっぱり撤回するべきです。(秋野幸子)
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