2008年8月9日(土)「しんぶん赤旗」

主張

米国の金融危機1年

「新自由主義」路線の破たん


 サブプライムローン(低信用者向け住宅ローン)の破たんでニューヨーク株式市場が大暴落し、米国発の金融危機が始まってから九日で丸一年になります。

 金融危機の深まりとともに、米国の実体経済にも、経済成長の急激な減速、失業者の急増、インフレ率の上昇など、スタグフレーションの兆しが強まりつつあり、まさに「米経済は重大な試練」(バーナンキ米連邦準備制度理事会=FRB=議長、七月十五日の議会証言)に直面しています。

金融投機化、ドル不安

 金融危機が始まってから、FRBの度重なる金利引き下げ、米欧日金融当局の協調による四十兆円の資金供給、今年一月のブッシュ政権の十六兆円の緊急財政対策、三月の大手投資銀行ベアスターンズの救済、七月の米住宅公社二社の救済など、相次いで緊急対策が取られてきました。

 しかし、金融危機の根は深く、根本的な解決の見通しは開けていません。

 今回の米国発の金融危機の根源には、「新自由主義」金融理論によって「金融自由化」を世界各国に押し付け、投資ファンドなどによる投機的な金融活動を野放しにし、信用膨張を続けてきたことがあります。

 こうした金融危機を再び起こさないためには、投機マネーを野放しにしてきた「新自由主義」金融政策を転換し、投機的金融活動に対する国際的な監視と実効ある規制措置が不可欠です。

 七月の日本共産党の第六回中央委員会総会(六中総)は、「国際社会が共同して多国籍企業・国際金融資本への規制をはかること」、「すでに世界の現状とあわなくなっているIMF(国際通貨基金)、世界銀行、WTO(世界貿易機関)などの民主的改革」を提起しました。

 米国の金融・経済危機の深まりの背景には、ブッシュ政権が国際社会の世論を無視してイラク戦争を強行し、財政赤字と経常収支の「双子の赤字」を拡大して、ドル暴落への内外の懸念を拡大していることもあります。

 イラク戦争の泥沼化で、二〇〇九会計年度の軍事費は五千百五十億ドル(約五十五兆円)に膨張し、公的累積債務も初めて十兆ドル(約千七十兆円)を突破しました。ブッシュ政権下の六年間(〇一年〜〇六年)の経常収支赤字の累計も約三兆六千億ドル(約三百八十五兆円)に膨れ上がっています。

 米国の金融危機と「ドル不安」を解決するためには、「双子の赤字」を拡大する経済政策、戦争政策の根本的転換が求められます。

公平な国際経済秩序を

 米国発金融危機の一年は「新自由主義」金融政策の破たん、米国の内外路線の転換の必要性を示すとともに、世界がドル支配に代わる新しい国際経済秩序を模索する時代に入りつつあることを示しています。六中総は「一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざす」(日本共産党綱領)という立場が重要になっていると指摘しています。

 米国は、これから年末へむけて大統領選の最終盤を迎えます。金融危機一年の教訓に立って、米国民がどのような選択をするか、世界が注視しています。


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