2008年8月10日(日)「しんぶん赤旗」

環境学会が警鐘

イタイイタイ病 認定40年

苦しみ 今も続く


 富山湾にそそぐ神通川流域のイタイイタイ病の公害病認定から四十年。苦い教訓を次世代とアジアにどう伝えるかをテーマに、日本環境学会は九日、富山県射水市でシンポジウム「富山・イタイイタイ病のたたかい」を開催しました。同日からはじまった同学会の第三十四回研究発表会の企画の一つとして開かれたもの。

 小学生や中高生から、お年寄りまで約百人が参加。長年、イタイイタイ病の問題にとりくんできた医師らが報告しました。報告から、救済されたのはカドミウム被害者の一部で、イタイイタイ病以外の多くの被害者は救済されずに残されている現状が明らかになりました。

 富山県の萩野病院の青島恵子医師は、イタイイタイ病はカドミウム腎症(尿細管障害)とカドミウム骨症(骨粗しょう症による骨軟化症)を重症化させた慢性中毒症で、カドミウム健康被害のごく一部だと報告。救済されたのは重症のイタイイタイ病患者(約二百人、うち生存者は六人)で、初期のカドミウム腎症の被害者などはいまだに救済の対象となっていないと問題点を指摘しました。

 環境問題研究者からは、環境復元について住民運動の成果や、いまなお大きな課題が山積していることが報告されました。


東京・築地市場の移転先

汚染調査 お粗末

 東京都中央卸売市場(築地市場)の移転予定地の東京・豊洲地区は土壌汚染調査が不十分―。九日に富山県射水市の富山県立大学ではじまった日本環境学会研究発表会で、同学会の土壌汚染問題ワーキンググループが都の土壌汚染調査結果の欠陥を指摘し、より厳密に汚染の実態を把握すべきだと批判しました。報告した坂巻幸雄元地質調査所主任研究官は「雑な調査で安全は担保できない」と、移転計画強行に警鐘をならしました。

 坂巻氏らの研究グループは、移転予定地の豊洲地区の工場跡地が高濃度の発がん性物質(ベンゼン、シアン、ヒ素など)で汚染されており、食品を扱う場所としては不適当だと指摘。追加調査で土壌の環境基準の四万三千倍のベンゼンが検出され、地下水のベンゼンの基準超過地点も五百六十一カ所になるなど、汚染が深刻な様相なのに、砂・粘土の地層「有楽町層」の下の土壌と水質については「不透水層」(水を通しにくい地層)などとして汚染調査もしていないと批判しました。約四千のボーリング調査をしたのに、詳しい土壌分析も公表していないなどの問題点をあげ、対策をすれば影響はないとする都の結論は「おそまつで、雑だ」とのべました。

 日本環境学会は昨年二月、日本科学者会議とともに築地移転計画の学術シンポジウムを開催し、問題点を指摘。ことし二月には石原都知事などに公開質問状を出していました。



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