2008年8月13日(水)「しんぶん赤旗」

主張

情報保全隊の統合

「憲兵政治」の復活を許さない


 政府は臨時国会で、先の通常国会で廃案になった防衛省設置法等改定案を再提案し、成立を狙っています。それには、陸海空自衛隊ごとにある情報保全隊を統合して「自衛隊情報保全隊」を新設する内容が含まれています。

 自衛隊情報保全隊の新設は、情報漏えい防止に加え、自衛隊に対する外部からのスパイ工作を防ぐためと防衛省は説明します。しかし重大なのは、自衛隊の各情報保全隊を統合することによって国民監視の強化をもくろんでいることです。国民の言論・表現活動への監視は憲法違反です。自衛隊情報保全隊の編成など論外です。

基本的人権の侵害

 自衛隊はいまや世界でも最強レベルの戦闘集団です。その自衛隊の情報保全隊が基地から飛び出し、反戦平和や生活改善にとりくむ国民を監視していたことが昨年大問題になりました。戦前、国民を監視・抑圧し日本を侵略戦争に導いた「憲兵政治」の復活かと国民が危機感をつのらせ、厳しく抗議したのは当然です。

 日本共産党の志位和夫委員長が昨年六月に示した、陸自情報保全隊の内部文書の活動記録はどれも、基本的人権を明記した憲法に正面から違反するものばかりです。「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題した文書には、自衛隊がイラク派兵反対運動を敵視し、特別体制で監視にあたったことが示されています。

 新聞記者がイラク派兵を取材したことや、映画監督の山田洋次さんの映画で有名になった「黄色いハンカチ」を使って自衛隊派兵支持を得ようとした自衛隊のやり方を、山田さんらが批判したことまで監視です。戦前の憲法下ならいざ知らず、現憲法下での政府批判は自由です。政策への批判が気に食わないといって監視の対象にするのは、憲法をないがしろにするごう慢な態度のあらわれです。

 見過ごせないのは、政府・防衛省が、批判されたのを反省するどころか、それを逆手にとって国民監視を当然視する態度をむきだしにしていることです。

 久間章生防衛相(当時)は、国民の動きを、「公開の場に出かけていって情報収集することは、悪いことじゃない」(二〇〇七年六月七日参院外交防衛委員会)とのべました。従来政府は、情報保全隊の前身である調査隊の活動は、大勢の人が基地前に集まり中に入る動きをした場合、「動向を見守り、隊の中に知らせる」だけだと説明していました(一九七三年九月二十六日参院内閣委員会、久保卓也防衛局長)。これと比べても久間発言の危険性は明白です。

平和の流れに反する

 自衛隊の国民監視強化は日米軍事同盟を侵略的に強化する政策と不可分です。海外での戦争に備えて、国民の政府批判を押さえ込む策動を許すことはできません。軍事同盟強化は、戦争ではなく話し合いで問題を解決する世界の平和の流れにも反するものです。

 自衛隊情報保全隊の新設は、政府・軍部が国民の目と口をふさぎ、侵略戦争に突入した暗黒時代の復活につながりかねない重大問題です。軍の秩序を目的とした戦前の憲兵隊は、やがて国民全体の監視・抑圧機関となりました。「憲兵政治」の誤りをくりかえさせないためにも、自衛隊の国民監視活動をやめさせることが重要です。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp