2008年8月13日(水)「しんぶん赤旗」
投機規制の穴ふさげ
エンロン・ループホール
「原油高の原因」 米国内に批判
原油先物市場への投機資金の流入は、原油価格を高騰させ世界経済を直撃しています。そこには、エンロン・ループホールと呼ばれる規制の抜け穴がありました。この抜け穴をふさぐことが米国内でも課題になっています。(金子豊弘)
原油高騰の元凶として挙げられているのが、ヘッジファンドや大手金融機関、機関投資家などの巨額の投機マネーです。“小さな部屋の中にいる巨像”(ジョージ・ソロス)といわれ、先物市場で暴れまわっています。
現物の千倍
「原油の先物取引が行われているニューヨーク商品取引所では、現物の取引に比べ千倍以上のペーパー取引(現物を伴わない先物取引など)が行われている」
日本政府の二〇〇八年版「通商白書」は、原油先物市場が実需にもとづかない投機市場になっていると指摘しました。
市場が投機化した一因は、規制当局による取引市場への監視の目が届かない仕組みができてしまったからです。それがエンロン・ループホールです。ループホールとは、日本語で抜け穴のことです。
この規制逃れの手法は、二〇〇〇年の商品先物現代化法によってつくられました。原油などのエネルギー商品を電子取引や取引所を経由せずに店頭取引で行う場合、先物市場を監視している商品先物取引委員会(CFTC)の規制を受けないようにしたのです。この抜け穴を通じて巨額の投機資金が原油先物市場に流れ込み、実需に基づかない投機取引を活発化させました。エンロン・ループホールによって原油価格は二〇ドルから二五ドルも上昇したとの見方もあります。
エンロン・ループホールは、その名前のとおり、米エネルギー大手のエンロン社のロビー活動によってつくられた抜け穴です。当時の共和党の上院議員がエンロン社の強い要請によって土壇場ですべり込ませたものといわれています。
エンロン社は、エネルギー業界の規制緩和で急成長を遂げた規制緩和の申し子です。政権や議会にたいして巨額の政治献金を行ってきたことでも知られています。
深刻な遺産
不正会計スキャンダルによってエンロン社は破たんしたものの、その遺産は世界の人々の生存にかかわる深刻な被害を与えています。
米国議会で原油高騰の原因は「投機(スペキュレーション)」と証言したファンドマネジャーのマイケル・マスターズ氏は、六月の議会証言で「すべての店頭取引の決済を適切な先物取引所を通じて行うことが必要」などと投機のための抜け穴をふさぐよう提言しました。
航空・運輸業界を中心とする米国のロビー団体(ストップ・オイル・スペキュレーション・ナウ)は、エンロン・ループホールの「完全な閉鎖」を求めています。
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