2008年8月25日(月)「しんぶん赤旗」
後期高齢者医療制度
5カ月も保険証なし
政府は対策怠る
後期高齢者医療制度の実施で、被用者保険(組合健康保険など)の扶養家族だった岐阜県関ケ原町の村山栄子さん(74)=仮名=は、五カ月近くも保険証のない状況に置かれました。そこから浮かび上がってきたのは、同制度をやみくもに進めながら、無保険者対策を事実上放置してきた政府の無責任さです。
制度開始から百四十日がすぎた八月二十日、栄子さんの元にようやく保険証が届きました。これまで月に一度通う歯科で「保険証まだですか」と聞かれるたびに不安でした。
栄子さんは「また、(病院に)行かんならんので毎日(新しい保険証を)待ってました。ほっとしました」といいます。
なぜ、こんな事態が起きたのでしょうか。
四月、会社員の夫(75)に後期高齢者医療保険証が届き、夫の扶養家族だった栄子さんはそれまで使っていた保険証を返しました。しかし、栄子さんの新しい保険証についての案内はどこからも届きませんでした。
知らせなし
「自分で申請しないといけないことをだれも知らせてくれなかったんです。役場からも夫の会社からも何の知らせもありませんでした」と栄子さん。
四月中旬、知り合いの日本共産党関ケ原支部の党員に相談。本紙の「七万人、無保険の恐れ」(三月三十一日付)という記事を紹介され、ようやく他の医療保険に入ることが必要だとわかりました。
栄子さんの場合、夫のほかに扶養してくれる人がいなければ、国民健康保険に入ることになります。栄子さんは町役場に足を運び、「国民健康保険にいれてください」と話しました。しかし、町の担当者は、同居している会社員の息子がいることを理由に、「息子の扶養家族となるのが順序だから」と、受け付けてくれませんでした。
そこで五月、今度は息子の健康保険の扶養家族になるために、息子の健康保険を取り扱っている健康保険組合に書類を提出しました。
ところが、夫の収入が息子より多く、「優先扶養義務」が夫にあることが判明。この場合、扶養家族と認める基準では、息子の扶養家族になれません。健保組合では審査は長引き、結果が出たのは八月十九日。非認定でした。
困った栄子さんは再度、町に国保加入を申請し、ようやく保険証が交付されました。
栄子さんは「私の保険証について何の知らせもなく、健保組合も前例がないからと手続きに手間取ったようです。大変な制度やねえ」と話します。
制度廃止を
四月の国会で、後期高齢者医療制度の導入にともない大量の無保険者が生まれる危険性を追及した日本共産党の小池晃参院議員はいいます。
「私たちが指摘してきた問題が、五カ月間も解決しなかったという実態を聞いて驚いています。このような方が日本中に残されている可能性があるので、厚労省には緊急調査し解決を求めます。こうした事態をうむ制度そのものを廃止するしかありません」
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