2008年8月31日(日)「しんぶん赤旗」
主張
厚労省「たたき台」
派遣労働者を守る抜本改正を
厚生労働省が二十八日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会に対して、労働者派遣法改正案の骨格となる「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」(たたき台)を示しました。
社会的批判を浴びている日雇い派遣について、「たたき台」には三十日以内の短期雇用を原則禁止とする方向が盛り込まれました。登録型派遣の原則禁止は盛り込まれませんでした。派遣期間を超えたり違法行為があった場合、派遣先が直接雇用したとみなす「直接雇用のみなし規定」は、行政の「勧告」にとどめました。
正社員の道を確実に
日雇い派遣を含む登録型の雇用形態をめぐっては、労働者の勇気ある告発と労働組合のたたかい、日本共産党の国会内外での論戦が結びつき、規制強化を求める世論が強まっています。政府自身が「私は、常用雇用が普通だと思う。…日雇い派遣については…原則的にこれはもうやめるような方向でやるべきではないかと思う」(舛添要一厚労相)と認めているほどです。
たたき台が、条件付きながら日雇い派遣の原則禁止を盛り込んだのは当然です。しかし、多くの労働者と労働団体が求めている抜本改正には不十分です。
たたき台がいう日雇い派遣の原則禁止は、三十日以内という線を引いて制限しようとするものです。三十日を超える契約なら勝手放題ということになりかねず、不安定雇用は改善されません。
非人間的な派遣労働をなくすために大切なのは、原則を明確にすることです。労働者派遣は常用型を基本とし、登録型は例外として専門的業務に限定することです。つまり一九九九年の労働者派遣法の改悪で「原則自由化」した以前の状態に戻すことです。この措置でこそ日雇い派遣とかスポット派遣をなくすことができるのです。
労働者が将来に希望を持って、人間らしく働き生きていくうえで、日雇い派遣をはじめ不安定雇用をなくすことは緊急課題です。
同時に重要なのは、法律に「みなし規定」を設け、派遣労働者の正社員化の道を確実にすることです。たたき台が「みなし規定」について、派遣先に「従前以上の条件で雇用契約を申し込むことを勧告できる」としたのは、世論の批判で対応を迫られたからです。
松下プラズマの労働者が、偽装請負を告発して解雇されたのは不当だと解雇撤回を求めた事件の大阪高裁判決(四月二十五日)では、松下の違法行為(偽装請負)を認めて労働者との間に「黙示の雇用契約」が成立しているとし、直接雇用を命じました。行政の「勧告」だけでは、告発者を短期雇用で雇い止め(解雇)にするという理不尽がまかり通ることになります。判決のように派遣先と労働者の間に雇用契約を認めることが重要です。
権利の擁護を第一に
労働者派遣法の見直しは、日本社会の直面する重要課題です。労働者保護を取り払って、労働者が貧困にあえいでいては、貧困・格差と、いびつな社会をますます拡大するだけです。労働者の生活向上は、企業の発展にとっても、日本経済と社会の発展にとっても不可欠です。
政府は速やかに労働者の権利の擁護を第一にした抜本改正を急ぐべきです。