2008年9月7日(日)「しんぶん赤旗」
主張
株価大幅下落
アメリカ頼みに未来はない
週末の東京株式市場は前日の欧米市場の株安、とりわけことし四番目の下落幅を記録したニューヨーク株式市場の急落を受けて、ほぼ全面安の展開となりました。
日経平均は三百円を超える大幅下落で、終値はことし三番目の安値に落ち込みました。
アメリカ発の金融・経済危機の深刻化と、日本経済に内在する先行きへの不安が投資家心理を冷え込ませています。
実体経済の悪化に波及
アメリカの中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、金融不安の嵐の影響が雇用悪化など広い範囲に及び始めているとのべています。
金融危機の発端となったサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)の破たんは、金融機関の巨額損失に跳ね返りました。損失を抱えた銀行の貸し渋りに加え、金融市場から逃げ出した投機マネーが原油や穀物の商品市場に流入して物価を高騰させ、実体経済を揺さぶっています。
日本のGDP(国内総生産)に匹敵する五兆ドルもの債権・債務を抱える二大住宅金融機関、「ファニーメイ」と「フレディマック」の経営危機は世界を震撼(しんかん)させています。
アメリカ経済は「記憶にある中で最も厳しい環境にある」とバーナンキ議長が指摘しているように、いまだに悪循環の出口さえ見えていません。
日本政府は「アメリカ経済の回復と並行して日本の経済も戻ってくると確信している」(与謝野馨・経済財政相)と、依然としてアメリカ頼みの姿勢です。しかし、そんな楽観論が通用しないことは明らかです。
自公政権が本格化させた「構造改革」は、家計を犠牲にしてトヨタやキヤノンなど大企業の競争力を強める本末転倒の路線です。派遣労働の自由化でワーキングプアを広げ、「大企業に減税、庶民に増税」という逆立ちした税制でも社会保障の削減でも、徹底して家計を痛めつけてきました。
内需を冷やして輸出大企業を応援した「構造改革」路線が、日本経済をいっそうの外需頼み、輸出依存に陥れたのは当然の帰結です。日本経済の規模(GDP)と比較した輸出額の割合は、二〇〇一年度の10・2%から〇七年度には16%へと一・六倍に急上昇しました。
収入を超えて消費を過熱させてきたアメリカの家計の借金は、十年前には二十年で返済できる規模だったのに、今では返済に七百年もかかるほど膨張しています。これ以上アメリカの消費を当てにすることはできません。
最大の消費大国・アメリカ経済の構造的な低迷は、輸出頼みの「構造改革」路線のゆきづまりを示しています。
大企業から家計応援に
「構造改革」で痛めつけられた日本の家計は、それでも日本経済の六割近くを占める最大の需要主体です。アメリカの景気にほんろうされない安定した経済をつくるためにも、内需の影響を強く受ける中小零細企業と農業の回復のためにも、家計をいかに温めるかが決定的に重要です。
投機マネーの暴走を抑える実効性のある投機規制に踏み出すとともに、大企業中心の外需依存を改めて家計の応援へ、経済政策を抜本転換することが求められます。