2008年9月8日(月)「しんぶん赤旗」
主張
「福祉灯油」
厳しい冬の生活支援拡充を
原油の高騰で石油や関連商品が値上がりし、国民の暮らしと中小零細業者や農・漁業者らを直撃しています。なかでもこれから厳しい冬を迎える北海道や東北などでは、灯油価格の高騰が住民に不安を与えています。
暖房が命にかかわる北国にとって、生活必需品である灯油の値上がりは深刻です。暖房用の灯油の需要期は間近に迫っており、国や自治体が灯油の購入を支援する「福祉灯油」制度の実施・拡充は切実な要求です。
灯油高騰は死活問題
「福祉灯油」制度はもともと生活困窮者に対する対策として始まった制度で、高齢者や障害者世帯、母子家庭世帯など、住民税の非課税世帯を中心に、市町村が灯油の購入費を援助しています。制度は自治体によってまちまちですが、一世帯あたり数千円から数万円を助成しています。
北海道では最初は道の制度としてスタートしましたが、その後市町村に移されたため、市町村の要望で道が費用の一部を助成するようになりました。昨年には「原油の急騰対策」として、特別交付税による国の支援も実現しました。暖房用の灯油は全国で使われており、本来は国の責任で実施すべき制度です。
北海道では百八十市町村中、百七十六(二〇〇八年一月現在)が「福祉灯油」を実施しています。福島を除く東北の各県と、群馬、富山、福井、鳥取、島根、徳島の各県では全市町村がおこなっています。
しかし、北海道でも政令市の札幌市は実施していません。また、財政難で制度を縮小したり、冬期加算があることを理由に生活保護世帯を除外したりする市町村もあり、国と都道府県の支援の拡大が求められています。
北海道内の灯油価格(十八リットルあたり)は、昨年一月に千三百七十六円、八月には千四百七十八円だったものが、ことし一月は千七百八十三円、八月には二千四百八円に跳ね上がっています。家庭用灯油の年間使用量が一世帯(三人)あたり千七百三十四リットルで全国平均の三倍近い北海道では、灯油価格の値上げが家計に大きく響きます。
一年前にくらべ千円近い値上がりが家計を直撃するのは必至です。記録的な高値に、住民は「こんな高い灯油は買えない。凍え死ねというのか」と、「福祉灯油」制度の拡充を切実に要望しています。
とくに、札幌市で「福祉灯油」をと求める声は切実です。札幌と同じ政令市の仙台市では、昨年末の臨時議会で「福祉灯油」実施を決めました。生活保護世帯は無条件で、ひとり親世帯や障害児者施設、児童福祉施設、認可保育所、養護老人ホームなど福祉施設も助成対象にしています。
支援制度を国の責任で
異常な灯油の高騰は、文字通り住民の暮らしと健康を脅かします。低所得者にとっては死活問題です。住民の切実な声にこたえるのは国と自治体の責任です。とりわけ政府は、実施自治体への特別交付税の支援だけにとどめず、財政支援を抜本的に拡充すべきです。
「福祉灯油」制度は、住民の運動が行政を動かし、日本共産党の議員も力を合わせて、実現し拡充してきました。灯油急騰のいまこそ、住民の声と運動を大きく広げていくことが求められます。
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