2008年9月10日(水)「しんぶん赤旗」

戦前の「司法官赤化事件」とは?


 〈問い〉 戦前の1930年代にあった「司法官赤化事件」とは、どんな事件だったのですか?(福岡・一読者)

 〈答え〉 「司法官赤化事件」とは、1932年から33年にかけて、10人をこえる裁判官や裁判所の職員が、全国各地で治安維持法違反を理由に逮捕され、そのうち東京地裁の尾崎陞(すすむ)判事など4人の判事と書記の西館仁など5人の裁判所関係者が起訴された事件です。

 天皇制の絶対的な権力のもとで、「天皇の名で」裁判をおこなう裁判所にまで、日本共産党の組織が及んでいたということで、「神聖な司法部まで」日本共産党の影響があった重大問題だと大々的に報道されました。

 事件は、これらの人々が、日本共産党に資金カンパをしたとか、「赤旗」の配布を受けていたとか、研究会に参加したとか、あるいは一部の人が活動家に住居を世話したとか、日本共産党員になったとかいう、今でいえば全く当然の何でもない普通の活動が罪にとわれたものです。

 しかし、そもそも治安維持法は、こうした日本共産党への加入や活動支援、協力を、「国体の変革(国の政治のあり方を根本的に変える)」として、天皇制のもとでは、許せない考え方だとし、最高刑は死刑をもって厳罰に処すという、思想を罰する悪法でした。

 裁判の結果は、判事の尾崎が6年、滝内礼作、為成養之助が各3年、福田力之助が2年、組織の活動の中心メンバーで、「転向しなかった」とされた書記の西館仁は8年と、この5人には懲役の実刑が科せられました。

 なお、戦後前記の4判事は、いずれも弁護士となり、自由法曹団に加入して、各方面で活躍しました。また、西館仁は日本共産党中央委員・北海道委員長などとして活動しました。(法)

〔2008・9・10(水)〕


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