2008年9月12日(金)「しんぶん赤旗」
イラク空自 年内撤収
政府 アフガン給油活動には固執
政府は十一日、イラク特措法に基づき同国で米軍などへの空輸支援を続けている航空自衛隊について、年内をめどに撤収させると発表しました。町村信孝官房長官、高村正彦外相らがそれぞれ会見しました。米軍主導のイラク戦争と、それに続く軍事占領への批判が強まるもとで、米軍支援に固執し続けた政府の派兵路線の破たんを示すものです。
町村官房長官は、イラク政府との協議のなかで、先方から「来年以降の多国籍軍の活動について関係国と調整したいとの意向が示された」と述べ、空自撤退を求められたことを示唆しました。
イラクで軍事活動をする多国籍軍の駐留根拠になっている国連安保理決議が十二月で期限切れになります。高村外相は、決議の期限切れが要因かと問われ、「(それも)一つのきっかけ」だと答えました。
同決議の期限切れ後も駐留を続けるため、イラクとの間で地位協定を締結することについては、政府内からも「できっこない」(政府高官)との声もあがっていました。
町村氏は「インド洋での(アフガン戦争のための海上自衛隊による)補給支援活動は、ぜひとも継続する必要がある」と強調。来年一月期限切れの新テロ特措法の延長に固執する考えを示しました。
空自は二〇〇三年十二月からイラクへの派兵を開始。翌年一月から派兵された陸上自衛隊の撤収後も、クウェートを拠点に、C130輸送機でバグダッドなどへ物資や米兵らの空輸を続けていました。今年六月時点で約二百十人の隊員が活動。イラク特措法の期限は来年七月末まででした。
「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」の池住義憲代表は「四月十七日に勝ち取った名古屋高裁(の違憲判断)が大きな影響力をもって政府を動かした。政府はインド洋での給油活動も撤収すべきだ」と話しました。
違憲の派兵であり当然
市田書記局長が指摘
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日本共産党の市田忠義書記局長は十一日、政府がイラクに派兵している航空自衛隊の年内撤収の方向性を発表したことについて「当然のことだ」と述べました。
市田氏は「もともとイラク戦争自体が国連決議にもとづかないアメリカの先制攻撃による侵略戦争だった」と指摘。戦争の根拠とされていたフセイン政権による大量破壊兵器の保有も、アルカイダとの関係も、それぞれがアメリカ自身の調査によって崩れたもとでも、戦争に協力・加担してきた日本政府の態度を批判しました。
市田氏は日本共産党が憲法違反のイラク派兵に一貫して反対してきたことを指摘。さらに、今年四月には名古屋高裁でイラク派兵は憲法違反で、イラク特措法にも違反しているという判決が下ったことを述べ、「一日も早い撤収が当然だ」と強調しました。
市田氏は、同時多発テロから七年で、戦争でテロはなくならないことはいよいよ明白となり、アフガニスタンでは米軍の無差別の掃討作戦が民間人の命を奪い、アフガン国民の外国軍への怒りは頂点に達していると指摘。「戦争とテロの連鎖」を告発し、「平和的・外交的な解決をめざし、国際的にテロリストを孤立させていく方向こそが大事だ」と述べました。
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