2008年9月12日(金)「しんぶん赤旗」
主張
空自イラク撤収方針
無法な戦争支援が破たんした
政府は、イラクで米軍を支援している航空自衛隊を、年内に撤収させる方向で検討に入ることを決めました。
政府はイラクの事態が「改善している」といいますが、撤収は、無法な戦争支援をやめるよう求める国内世論とともに、イラク国内をはじめ国際社会の撤退要求の強まりをこれ以上無視できなくなったことが要因です。無法な「イラク戦争」支援の誤りは明白です。政府はイラクとともに、インド洋からも自衛隊をただちに撤退させるべきです。
自衛隊の居場所はない
イラクからの撤収については七月ごろから伝えられていました。しかし政府は、国連安保理の動向やアメリカとイラクの地位協定締結交渉の動きを理由に撤収の検討を否定し、「せいせいと任務を継続する」(七月二十九日、石破茂防衛相=当時)と、米軍への空輸支援活動をあくまでも継続するとの方針を示していました。
政府が態度を変えたのは、アメリカ軍や自衛隊をイラクに派兵する根拠にしてきた国連安保理決議が十二月で終了することが確定的になったうえに、地位協定交渉も見通しがたたないためです。
イラクのマリキ政権は国連にたいして、安保理決議を今年限りにすることを求めています。イラク国内の外国軍撤退要求がかつてなく大きくなり、それに従うしか道がなかったからです。安保理決議がなくなれば、日本を含め多国籍軍はイラクから撤収せざるをえません。残るのは米、英など数カ国になるとの報道もあります。
米政府は、安保理決議が切れても駐留を可能にする地位協定をイラクと結ぶため躍起となっています。しかしマリキ政権は米軍撤退の期限を示すことを不可欠の条件にしており、米政府の思惑通りにことは進んでいません。七月末にまとまるはずの交渉も暗礁にのりあげたままです。
マリキ政権が米軍など多国籍軍の撤退を求めるのはイラク議会をはじめ、国民の声に押されてのことです。そもそも「イラク戦争」は、国際社会の圧倒的多数が開戦に反対していたのに、フセイン政権が大量破壊兵器をもっているとうそをいって、アメリカが始めた無法な先制攻撃戦争です。無差別攻撃で罪のない国民を何十万人も殺し、何百万人もの人々を難民にした米軍や多国籍軍に、憎悪の声が広がっているのは当然です。
その米軍の兵士と軍事物資をバグダッドまで空輸し、米軍の攻撃作戦を支えているのが航空自衛隊の支援活動です。イラク国民から見れば、日本の空自も共犯者であり、撤退を要求されるのは当然です。いまやイラクには自衛隊の居場所はなくなっています。
戦争そのものの中止を
自衛隊のイラク派兵差し止め訴訟で名古屋高裁は、米軍に対する空自の空輸支援が憲法にも特措法にも違反するとの判決を言い渡しました(四月)。憲法と特措法違反の状態を続けることはもはや許されることではありません。
アメリカがテロを口実にアフガニスタンを攻撃して七年、「イラク戦争」を始めてからでも五年余りになります。戦争で片を付けるやり方の誤りは、いよいよ明らかになりました。政府は戦争支援をやめ、アメリカにも無法な戦争の中止を求めるべきです。
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