2008年9月14日(日)「しんぶん赤旗」
高齢者医療改悪 大きな負担増
労働者に しわ寄せ
西濃・京樽… 相次ぐ健保解散
後期高齢者医療制度など四月から始まった新たな高齢者医療制度が現役世代を直撃しています。大手企業のサラリーマンらが加入する健康保険組合が同制度へ拠出する金額が急増。解散する健保が相次ぐ深刻な事態です。
ハイペース
▽物流大手企業の西濃運輸の健保が八月一日付で解散▽持ち帰りすしチェーンの京樽の健保が九月一日付で解散―。
大手企業が健保を解散して、中小企業の従業員が入る政府管掌健康保険(政管健保)に移るケースが相次いでいます。今年四月以降の半年で十三組合が解散。昨年度一年間の十二組合を上回りました。厚生労働省によれば、来年四月までに解散したいとの相談が四組合からありました。
いずれのケースも高齢者医療制度への拠出金増の影響とみられます。西濃運輸の健保の高齢者医療制度への拠出金は前年度比で約二十二億円も増加。京樽の健保も医療費負担が二倍強になりました。
負担増分を保険料(労使折半)で賄うとなると10%以上になり、政管健保の保険料8・2%を超過するといわれています(健保の平均保険料は7・3%)。この結果、「独自の健保を維持するメリットはない」と判断し、解散への引き金となるわけです。
3千900億円
健保の負担増は、後期高齢者医療制度など高齢者医療制度改悪でもたらされました。
改悪によって、健保の負担は(1)「後期高齢者医療制度」への支援金(2)「前期高齢者医療制度」(六十五―七十四歳)への拠出金―の二つになりました。
厚労省の調べでは、約千五百の健保全体で、(1)は七百億円の負担増、(2)は三千二百億円の負担増。合計三千九百億円の負担増です。
健保は昨年度までも旧高齢者制度に納付金や拠出金を出してきましたが、制度改悪によって負担額は大幅アップ。政府は「高齢者医療制度で現役世代の負担を減らす」などと盛んに宣伝してきましたが、正反対の事態がもたらされています。
とくに増加したのは、「前期高齢者」にたいする拠出金です。〇七年度までは、支出対象が健保の旧加入者の医療費に限られていた(退職者医療制度)のに、今年度からは「前期高齢者」の多くが加入する国民健康保険(国保)への支出へと範囲が拡大されたためです。
政府は「国保財政を支援するため」と説明します。しかし、国保財政を苦境に追い込んだ責任は、国保への国庫負担を削減してきた国にあります。今回の改悪は、国がもたらした国保財政悪化のツケを健保に回したものです。
保険料上げ
健康保険組合連合会(健保連)によれば、〇八年度は九割近くの健保が赤字になる見込み。赤字総額も過去最悪の六千三百二十二億円に達します。
この負担は保険料アップになって労働者にのしかかります。すでに百四十一健保が保険料引き上げを決めました。
人材派遣健康保険組合では四月から保険料を6・1%から7・6%に。月収二十四万円の派遣労働者の場合、月七千三百二十円から九千百二十円にもなりました。派遣労働者からは「今後どれだけあがるか不安です」という声が上がっています。
また健保では、独自の上乗せ措置(窓口負担の軽減、人間ドックの実施など)をしており、健保の解散は、福利厚生面でも労働者に不利益をもたらします。
健保の負担増は、高齢者だけでなく現役労働者などすべての世代に負担と犠牲を強いる高齢者医療制度改悪の実態を改めて示しています。(宮沢毅)
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