2008年9月21日(日)「しんぶん赤旗」
米金融危機
不良債権買い取りへ
ブッシュ大統領 「政府が介入」
【ワシントン=鎌塚由美】金融危機の拡大に対処することを目的に、ブッシュ政権は十九日、連邦政府としての対策を発表しました。ホワイトハウスで緊急に声明を発表したブッシュ大統領は、「米政府の介入が不可欠」だと語りました。
ブッシュ大統領は、米政府による▽金融機関の不良債権の買い取り、▽投資信託基金に新たな政府基金を供給する、ことを表明。米議会からの速やかな承認を求める考えを語りました。
ブッシュ氏は、新たな公的資金投入について「金融システムに長期的な透明性と信頼をもたらす」ためのものと説明。ポールソン財務長官は同日、税金投入は「数千億ドル(数十兆円)」規模となる見通しを示し、米議会に必要な法案の来週中の可決を求めました。
ブッシュ大統領はまた、証券取引委員会(SEC)が、株の空売りの一時停止を決定したことを明らかにしました。
公的資金大量注入に懸念
十五日月曜日の大手証券リーマン・ブラザーズの経営破たんに始まり、今週の米金融界は揺れにゆれ、米政府も対応に追われました。結果、十九日にポールソン財務長官が明らかにしたものは、不良債権処理などのために「五千億ドル(約五十二兆円)の公的資金」が必要というもの。金融界の混乱にたいし、湯水のごとく公的資金を注入することに米議員からも懸念する声が出ています。
この日、米政府が示したのは不良資産買い取りのための基金の創設、基金型投資信託保護のための政府基金の支出などです。そのために必要な公的資金の額についてポールソン長官は「五千億ドル」という数字を口にしました。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、外部の専門家が必要資金が一兆ドルを超えるという見通しを示していると、さらに公的資金投入額が膨らむおそれがあることを指摘。ブッシュ政権与党のなかでも「民間の金融市場への政府の介入を増すことに批判的な議員がいる」と伝えています。
経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、この日の政府発表で株式市場もいくぶん息を吹き返したと述べながらも、「市場を翻弄(ほんろう)した複雑な金融問題の安定的な解決策になるのかどうか明確ではない」として、米の金融史のうえでも最大規模の救済策をもってしても安定がはかれるかどうかについては慎重な見方を示しています。 (ワシントン=西村央)