2008年9月23日(火)「しんぶん赤旗」
米金融危機 波紋広がる
“時代遅れの新自由主義”
韓国与野党 政策手直し求める声
韓国政界では、米国の金融危機を受け、「小さな政府」を標ぼうする李明博(イ・ミョンバク)政権に規制緩和路線の手直しを求める声が出ています。
野党・民主党の朴暎仙(パク・ヨンソン)議員(党政策委員会首席副議長)は最近の党会議で、「米国の金融危機は新自由主義の経済体制が生んだ失敗の断面」だとして、「問題は、李明博政権がむやみに公企業の民営化と規制緩和に走る金融政策を導入するなど、時代遅れの新自由主義の経済体制にしがみついていることだ」と批判しました。
民主労働党も声明で「韓国経済の災難を防ぐためには、金融規制緩和法案を再検討すべきだ」と求めました。
一方、李大統領は二十日、大統領府スタッフに対し、大企業の金融業参入規制の緩和、国営銀行の民営化などの「金融規制改革法案」を早期に成立させるよう指示しました。
しかし、与党・ハンナラ党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)院内代表は二十二日、ラジオ番組で、「米国の金融危機は『小さな政府、大きな市場』に象徴される新自由主義の崩壊だといえる」と指摘、「緊急に対策を立てる必要がある」と危機感を示しています。
保守・労働両党を批判
英紙 規制緩和路線推進で
【ロンドン=岡崎衆史】米国に端を発した金融危機を受け、英国では保守党のサッチャー政権(一九七九―九〇年)が導入し、労働党のブレア政権(九七―二〇〇七年)とブラウン現政権が引き継いだ規制緩和路線に批判が強まっています。
リベラル系のガーディアン紙二十日付は、サッチャー政権の「ビッグバン」(一九八六年の金融大幅規制緩和)によって「破滅の種はまかれた」(コラムニストのポリー・トインビー氏)と批判。「ニューレーバー」路線で規制緩和をすすめたブレア政権が「シティー(ロンドンの金融街)は労働党の下で安全だ」として、投資家の支持を集めてきたことをあげ、労働党政権にも責任があると指摘しました。
また同紙は十七日付で、規制緩和と自由化を特徴とする新自由主義の時代が「驚くほど突然に終わった」とするコラムニストのサイモン・ジェンキンズ氏の論評を掲載しています。
保守系紙も、新自由主義の問題点を認めています。
サンデー・テレグラフ二十一日付社説は、金融危機によって高まる規制強化を求める声に懸念を示し、それを防ぐために「新しいよりよい形式の資本主義」を築くよう主張。サンデー・タイムズ同日付社説も危機が「銀行への著しい不信と、行き過ぎと欲望の時代の負担を庶民が背負うことになるとの思いを残した」と書きました。
米国 不良資産買い取りに疑問
【ワシントン=西村央】米政府が公的資金で、最大七千億ドル(約七十五兆円)の金融機関の不良資産を買い取る方針を議会に提示したことをめぐり、米国では早くもさまざまな疑問が出されています。
ニューヨーク・タイムズ(電子版)は二十一日、「救済プランは本当に機能するのか」との分析記事で、財務省が買い取った不良資産を売却して返済に充てるとしていることについて、「複雑に入り組んだ不良債権にどれだけの価値があるのか実際のところは誰も知らない」と指摘。投入された税金が回収できないおそれがあると警告しています。
経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、ポールソン財務長官が二十一日のテレビの討論番組で、「われわれは仕事をやり切るために必要な資金を与えるよう要求していく」と表明したことに注目。「財務長官は(投入する公的資金が)現時点で計画されている七千億ドル以上にならない保証はないと語った」と論評しました。