2008年9月26日(金)「しんぶん赤旗」
主張
派遣法見直し建議
モノ扱いなくす抜本改正こそ
厚生労働省の労働政策審議会が二十四日、労働者派遣法の見直しに関する建議をまとめ、舛添要一厚労相に提出しました。
低賃金で雇用が不安定な日雇い派遣を規制するため日々または三十日以内の短期登録型派遣を原則禁止にし、違法派遣を受け入れた派遣先企業には、労働者に雇用契約を申し込むよう行政が「勧告」できる制度を提言しています。
世論と運動が規制緩和路線に歯止めをかけたもので、この流れを大きくして派遣法の抜本改正につなげることが求められます。
「原則自由化」前に戻せ
日雇い派遣に象徴される登録型の派遣労働や請負、契約社員などの非正規雇用の拡大は、「ワーキングプア」(働く貧困層)をつくりだしました。
派遣労働者は三百二十一万人で、派遣を含む非正規労働者は全労働者の三人に一人を占めます。その七割が登録型派遣で、派遣会社に登録しておいて仕事があるときだけ雇用される、人間をモノ扱いする「使い捨て」労働です。
「こんなやり方に未来はない」「結婚もできない」と全国各地で、若者が勇気をふるって立ち上がり、深刻な実態を告発しました。労働組合はもちろん、多くの労働者や国民が共感を寄せ、連帯してたたかいの輪を広げました。
日本共産党の実態調査や国会内外での論戦が、労働者のたたかいと結びついて政治を動かし、与野党を超えて派遣法の改正の議論が起こっています。
審議会では、使用者側関係者が「規制強化を求める世論に逆らえなかった」と嘆きました。ここまで追い込んできたからには、中途半端なとりつくろいで終わらせるわけにはいきません。
建議は、専門性の高い十八業務を除いて日雇い派遣を「原則禁止」にするなど規制強化へ転換する一方で、登録型派遣そのものは禁止せず、派遣元に常用化の努力義務を課すにとどめました。
今日のような非人間的な労働をもたらした根源には雇用ルールの破壊―派遣労働を原則自由化した一九九九年の派遣法の大改悪があります。大事なことは労働者派遣は常用型を基本とし、登録型は例外として通訳や研究開発など専門的業務に限定することです。そのためには、九九年以前の状態に戻すことです。
同時に、日亜化学(徳島県)やキヤノン宇都宮工場(栃木県)のように、偽装請負を告発した労働者が雇用を打ち切られ、職を失うというような事態が相次いでいることは、絶対に放置できません。松下プラズマ偽装請負事件の大阪高裁判決(四月)が、派遣先と労働者との間に「黙示の雇用契約」があったとみなして直接雇用を命じました。しかし建議は、その「みなし雇用」制度を認めていません。こうした大企業の身勝手を許さない法改正が必要です。
世論と運動の力を強め
もうけ最優先の財界・大企業は規制緩和の号令をかけ、史上最高の利益を上げつづけました。自公政治は国民の安定した雇用という生活の土台を大きく崩しました。
人間を「使い捨て」にする働かせ方に日本の経済と社会の未来はありません。世論と運動を強め、労働者の権利を守る派遣労働者保護法に抜本改正させる頑張りどきです。
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