2008年10月1日(水)「しんぶん赤旗」

集団自衛権 議論を指示

首相“国会の場で早く”


 麻生太郎首相は三十日、首相官邸で自民党の中山太郎憲法審議会長らと会談し、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使について、「国会に設置されている憲法審査会を早く動かして、与野党一体となって国民のために議論してほしい」と述べました。

 また、中曽根弘文外相は同日、麻生首相の憲法解釈変更の考えについて問われ、「安全保障の環境は変わってきた。国連平和維持活動(PKO)で一緒にいる外国軍、近海で共同演習している米軍が攻撃された場合、どうするかを考えておかないといけない」と述べました。

 麻生首相は二十五日、ニューヨークの国連本部で記者団の質問に答え、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈について「基本的に変えるべきものだとずっと言っている」と述べていました。これまで政府は、集団的自衛権の行使について「憲法上許されない」という立場をとってきました。

 しかし、安倍晋三元首相は昨年五月、米軍と海外で共同作戦を行うことを念頭に、公海上で併走中の米艦船が攻撃を受けた場合など四類型で集団的自衛権の行使の可否についての研究を指示。諮問を受けた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は今年六月、福田康夫前首相に対し、憲法解釈の変更によって「可能」とする「報告書」を提出していました。福田前首相は集団的自衛権の解釈変更に慎重姿勢を示し、同報告書は事実上放置されてきました。


解説

首相発言 憲法審査会始動狙う

 麻生太郎首相が集団的自衛権の議論の場に指示した憲法審査会は、二〇〇七年五月に強行された改憲手続き法に基づく機関です。衆参各院に設置され、改憲原案の審査権限を持っています。

 安倍自公政権が同年夏の参院選で惨敗したため、野党の反対で、同審査会の定員や審査のルールを定める審査会規程がいまだに議決されず、始動していません。改憲派は、憲法審査会の始動の遅れに焦りを強めています。

 憲法審査会は「日本国憲法に密接に関連する基本法制」についての調査を行うことも権限としています(国会法一〇二条の六)。改憲手続き法案審議の中では、集団的自衛権の行使についての憲法解釈の見直しも「九条に密接に関連するものとして当然(行われる)」(自民党・船田元衆院議員)とされていました。

 麻生首相の発言は、集団的自衛権の行使に向けた憲法解釈の変更をおしすすめるとともに、改憲策動の場となる憲法審査会の始動をはかる狙いがあるといえます。(中祖寅一)



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