2008年10月1日(水)「しんぶん赤旗」
追い出される脳卒中・認知症患者
診療報酬の算定方式を改悪
障害者の病棟など「兵糧攻め」
厚生労働省は、障害者や難病の人が入院する施設や病棟の診療報酬(いわゆる「医療の値段」)の算定方式を十月一日から改悪します。脳卒中の後遺症や認知症の患者を一定割合以上入院させている施設・病棟は、診療報酬を減額されます。
脳卒中や認知症の患者を多く抱える医療機関では、収入減になるため、医療関係者は「対象者の多くは高齢者だ。高齢患者の追い出しを進めるものだ」と批判しています。
算定方式の変更対象になるのは、重度の障害者などが入院する「特殊疾患病棟」(約一万四千床)と、「障害者施設」(約六万床)です。「特殊疾患病棟」では、脳卒中の後遺症の患者と認知症の入院患者が病棟の二割以上いる場合に診療報酬を減額。「障害者施設」では、三割以上いると減額するとしています。今年二月の診療報酬改定で決められました。
この算定方式によれば、脳卒中などによる障害者が約半分いるような施設を持つ医療機関は大幅な減収になります。このため、これらの患者を入院させない施設が増えるおそれがあります。しかし、在宅での受け入れが困難なケースが多く、行き場を失う患者が生まれかねません。
厚労省は、「これらの病棟や施設は、医療の必要が高い人が対象。しかし、脳卒中の後遺症による障害をもつ患者は医療ニーズが低い。本来の病棟の役割を明確にするためだ」などと、「追い出し」を推進する姿勢です。
また、政府・与党は、一般病棟に入院した七十五歳以上の「後期高齢者」で、入院日数が九十日以上になった脳卒中・認知症患者についても診療報酬を減額する方針を決め、十月一日から実施する予定でした。
しかし、「高齢者の露骨な追い出しだ」と批判が噴出したため、政府・与党は、「機械的に減額しない」という「経過的な措置」をとりました。その条件は「医療機関が退院や転院に向けて努力しているもの」だけが対象で、毎月報告書を提出しなければいけないという煩雑な仕組みです。医師からは「いまでも多忙なのに、新たな書類作成負担を強いる」という声が上がっています。
また、脳卒中・認知症患者は、一般病棟よりも、障害者病棟などの方が多く、今回の「経過措置」によっても、多くの患者が追い出される危険は変わりません。
今回の診療報酬減額は、「医療費削減」を狙った平均入院日数の短縮が大きな目的です。社会保障費削減のために、病院を「兵糧攻め」にして、患者を追い出す政策はただちに中止すべきです。(宮沢毅)
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