2008年10月3日(金)「しんぶん赤旗」
医療費7500億円圧縮計画
現場からも批判続出
共産党は撤回を主張
解説
医療・介護の充実を求める声が高まるなか、五年後に七千五百億円もの医療費を圧縮しようという計画を決定したことは、国民の願いに逆行するものです。計画は中止すべきです。
「医療費適正化計画」の推進は、後期高齢者医療制度の実施とならんで、自民・公明の与党が強行した二〇〇六年の医療改悪の柱の一つでした。
改悪に向けた議論のなかで、経済財政諮問会議では〇五年、奥田碩日本経団連会長(当時)など民間議員が、医療費の総額をGDP(国内総生産)の伸びの範囲内に抑えるべきだと提案しました。こうした議論のなかで厚生労働省が打ち出したのが、療養病床や平均入院日数の削減によって医療費の伸びを抑えるというやり方でした。
法案審議時、政府は全国に三十八万床ある療養病床を十五万床まで減らす目標を提示しました。介護型の十三万床を全廃し、医療型の二十五万床を十五万床に削減するという内容です。
しかし現場からは、「患者の受け皿となる介護施設や在宅介護などが足りず、多くの介護難民・医療難民を生むことになる」などの批判が続出しました。都道府県の担当者からも「厚労省の指示通りに減らすと、病院にも介護施設にも入れない患者が出かねない」との意見が出されました。
このため、計画策定の日程は大きくずれ込みました。厚労省は、今年三月に全国計画を決定する予定でしたが、都道府県の計画がなかなか出そろわず、半年以上も過ぎてからの正式決定となりました。それでも、まだ三県が未策定というのが現状です。
その内容も、政府が当初目標とした療養病床削減目標数を下回るなど、矛盾にぶつかっています。画一的な削減目標が、現場では通用しないことを示しています。
こうしたなかでも、療養病床を十二万床以上減らす計画を強行することは、深刻化している地域の医療崩壊を、いっそう加速させるものです。
医療切り捨て政策の大本には、社会保障予算の自然増を毎年二千二百億円も減らし続けるという社会保障費抑制路線があります。日本共産党は、療養病床の大幅削減の撤回を主張し、国民が安心して暮らせる社会にするために、社会保障を充実させる路線へと転換することを求めています。(秋野幸子)
病床なくなる
療養病床の患者さんを守る会世話人・野田浩夫さん(山口県保険医協会理事)の話 私たちが山口県内の病院におこなったアンケートでは、九割以上が療養病床の削減に反対しています。療養病床削減は、いま入院している患者さんの行き場がなくなるとともに、急性期病院にとっても必要不可欠な病床がなくなるという問題だからです。
急性期病院の患者は、治療後も医療の必要があれば療養病床に搬送されます。その療養病床が削減されてしまうと、急性期にいた人たちの行き場もなくなってしまいます。
県内で二つの救急病院がある市では、いまでもベッドに空きがないために救急患者を受け入れられないことが多く、六割以上を市外の病院に搬送しています。療養病床の削減で患者の受け入れ先が足りなくなれば、こうした事態がいっそう深刻化します。
山口県の計画は、療養病床を約四千床まで減らす方針ですが、医療現場は県に対し、少なくとも七千床は残してほしいと訴えています。現場の実態を無視した計画の中止を強く求めます。
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