2008年10月7日(火)「しんぶん赤旗」

主張

10・15天引きショック

怨嗟の声 首相は聞くべきだ


 七十五歳以上のお年寄りを差別する「後期高齢者医療制度」をめぐり、十月十五日の年金支給日から保険料の天引きが拡大することに、批判が高まっています。

 サラリーマンの夫や子どもの扶養家族でこれまで保険料を払わなくてよかった方に保険料がかかってきます。首都圏などの自治体でも天引きが始まります。さらに六十五歳から七十四歳までの世帯の国民健康保険料も天引きになります。ただでさえ少ない年金から保険料を天引きされて、お年寄りの暮らしはいよいよ成り立たなくなります。国民の怨嗟(えんさ)の声を、首相は聞くべきです。

625万人が新たな対象

 「後期高齢者医療制度」は、七十五歳になれば国民健康保険に入っていた人も、サラリーマンなどが加入する健康保険の扶養家族になっていた人も加入者本人も、それまでの保険から切り離してこの制度に移し、原則として保険料は年金から天引きする仕組みです。

 これまですでに四月、六月、八月の年金支給日に、年金額がごく少ない方を除いて約八百八十万人が保険料を天引きされています。十月からは新たに、「後期高齢者医療制度」の発足までは保険料を払わなくてよかったサラリーマンの扶養家族約二百万人、手続きの都合で天引きを実施していなかった首都圏など二十九の自治体に住む約九十万人、組合健康保険などの加入者本人でこの制度に移された約三十五万人が天引きの対象になります。七十五歳以上のお年寄りは、ほぼ全員が全国で保険料を天引きされることになるわけです。

 これに加えて、六十五歳から七十四歳までの高齢者だけの世帯の国民健康保険の保険料も、全国の九割以上の市町村で世帯主の年金から天引きされることになります。対象は約三百万人で、これを合わせ、約六百二十五万人が十月から天引きの対象になります。

 保険料の年金からの天引きは、政府や自治体にとってはとりはぐれのない制度ではあっても、年金受給者にとっては生活費にもろに食い込むことになります。これまでの天引きでも、問い合わせや抗議が殺到しました。十月からの天引き拡大を前にして、東京の一部の区では、窓口で払うことになっていた九月までの保険料納入のため「督促状」を送りつけたことが、混乱をよんでいます。新たな天引きが強行されれば、さらに批判が広がるのは必至です。

 問題は天引きの仕方にあるのではありません。根本は高齢者を差別する世界に例のない「後期高齢者医療制度」を強行したことにあります。国民の怨嗟の声にこたえるなら、政府は小手先の手直しでごまかさず、「後期高齢者医療制度」をきっぱり廃止すべきです。

しがみつくのは道理ない

 国会で廃止を求められた麻生太郎首相は、「見直し」は口にしたものの、「制度をなくせば解決するものではない」と、廃止の考えがないことを鮮明にしました。制度が矛盾をきたし、続けられなくなっているのに、存続にしがみつく首相の態度は道理がありません。

 もともと「後期高齢者医療制度」は、社会保障予算の削減を求める財界の要求によってつくられたものです。あくまで存続にしがみつく首相の態度は異常な大企業中心の政治を根本から正すことをいよいよ避けられなくしています。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp