2008年10月8日(水)「しんぶん赤旗」
「首切り自由の使い捨て労働」
政治の責任にかけて許すな
労働者派遣法の抜本改正を
衆院予算委 志位委員長が質問
日本共産党の志位和夫委員長は七日、衆院予算委員会で質問に立ち、日本を代表する大企業が労働者をモノのように使い捨てにする一方で、違法行為によって派遣労働を永久に続けようとしている実態を生々しく告発し、違法行為の一掃と労働者派遣法の抜本改正を迫りました。志位氏の追及に、与党議員も身を乗り出すように聞き入り、委員会室がたびたび静まり返るなか、麻生太郎首相も一定の前向き答弁をせざるをえませんでした。
違法を告発し職奪われる
麻生首相「極めて不当」
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志位氏はまず、日亜化学(徳島県)やキヤノン宇都宮光学機器などを例にあげ、偽装請負を告発した労働者が、違法な働かせ方を強いた企業によって職を奪われる事態が全国各地で起こっていることを首相に示しました。
手首に大けがを負ったり、上司にののしられながらも必死に働いてきた労働者の悲痛な訴えを突きつけ、「こんな理不尽なことはない」と力を込めた志位氏。「労働者にはモノをいわせず、モノのように使い捨てる。こんなことは許さないという決意が総理にあるのか」と迫りました。
これには「個別の案件には答えられない」と逃げの答弁を繰り返した首相も、「事実であれば、極めて不当だ」と明言しました。
世界のトヨタ 期間制限偽装
志位氏は世界一の自動車メーカーとなったトヨタグループの中核をなす「トヨタ車体」が、派遣の比率を高めることで労働コストを削減し、利益を百八十六億円から二百二十四億円に増やしていることを告発(図)。さらに、最長三年の期間制限を越えて派遣労働を続ける違法行為を工場ぐるみで行っている実態を明らかにしました。
トヨタ車体では、正社員と派遣労働者の配置換えを組み合わせて、三カ月と一日だけ派遣労働者のいない「クーリング期間」を形だけつくって、派遣労働を永久的に続けようとしています。
志位氏は、これらの手口を具体的に示し、「これは直接雇用を逃れるための“期間制限偽装”だ」「こんなことを許したら、派遣労働の期間制限は、全国どこでも何の意味ももたなくなる」と述べ、ただちに調査に入るよう要求しました。首相は「(私の)職務とは違う」などと調査を拒否する一方、「現実に照らして、法のもとに対応する」と答えました。
志位氏は、(1)違法行為からの救済を求めた労働者の職を奪うことは政治の責任にかけて絶対に許さない(2)違法状態で働かせていた場合には受け入れ企業の責任で正社員とする―の二点を力説するとともに、労働者派遣法を一九九九年の原則自由化以前に戻すなど抜本改正を要求しました。
そして、日弁連が「労働と貧困の現状は人権侵害」とする決議をあげるなど、人間らしい雇用ルールの確立が立場の違いを超えた国民的世論となっていることを示し、「日本共産党は、『首切り自由の使い捨て労働』をなくし、『働く貧困層』という社会的大問題を解決するまで、国民と手をたずさえて奮闘する」と決意を表明しました。
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派遣のクーリング問題 労働者派遣法では派遣先企業が三年継続して派遣を受け入れることを禁じていますが、派遣の受け入れがない期間(クーリング期間)が三カ月超あれば、新たに派遣を受け入れることができるとされています(厚労省の派遣先指針)。三カ月の中断があれば派遣を続けることができるもので、派遣は臨時的なもので正規雇用の代わりにしてはならないという原則に照らして問題を持っています。
派遣労働者から電話・メール
七日の志位委員長の質問に、実際に派遣労働で苦しんでいる青年などから、日本共産党本部に電話やメールが相次ぎました。
「松下の伊勢工場で働いている」という三重県の男性は「志位さんの質問に感動しました。私も配置換えで差別されています。違法行為をやめさせて、すべての派遣労働者が正社員になれるように、がんばってほしい」と語りました。
首相の答弁 志位氏感想
「不当」と認めるなら是正措置をおこなえ
日本共産党の志位和夫委員長は七日、衆院予算委員会での質問後、国会内で記者会見し、感想を述べました。
今年二月の予算委に続いて、今回も雇用問題にしぼった質問を行った理由について、「事態の進展、前向きの変化が出る一方、不当な雇い止めなど許しがたい逆流も起き、大企業の許しがたい無法が明らかになったため」と説明しました。
その上で、今回の質問への答弁について、全体として、政府は建前論を繰り返したが、偽装請負で違法を訴え救済を求めた労働者が職を失った日亜化学やキヤノンの実態を突き付けた結果、麻生太郎首相が「事実であれば、きわめて不当なことだ」と答弁したことに言及。「これは非常に重要だ。そうであれば、雇い止めなどといった不当なことを許さない措置をとることが政府の当然の責任になってくる」と強調しました。
トヨタが行っている派遣労働者の“期間制限偽装”については、「こんな違法なことが許されたら大変だ」という認識もなければ、是正の意思も示さなかったと批判しました。
また、具体的に事実を示して、トヨタへ調査に入るよう求めたのに対し、政府側が応じない姿勢を示したことについて、「キヤノンや日立グループをとりあげたときには違法があれば調査するといったが、トヨタとなると言えないのか。情けない限り、許しがたい態度だ」と批判しました。ただ、「現実にてらして対応する」(首相)と答弁したことは、今後、是正させていく足がかりになると述べました。
志位氏は最後に、「首切り自由」の不安定雇用をなくし、派遣労働という究極の「使い捨て」労働を大本から正していく方向で抜本的な法改正を行うたたかいをさらに進めていく決意を述べました。
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